パルダリウムの用土と底床|排水層の作り方
Contentsこの記事の内容7項目
パルダリウムで植物が溶ける原因のほとんどは、光でも温度でもなく底床の設計ミスです。水場がある容器では、底に水が溜まるのは当たり前。問題は、その水が植栽層まで上がってくるかどうかにあります。
この記事では、底床を3層に分けて考える基本設計と、層ごとに使える素材、そして水位の決め方を解説します。
- 構造
- 排水層 → 仕切り → 植栽層の3層
- 排水層
- 容器高さの1/5〜1/4。無機質のみ
- 水位
- 排水層の上端を超えないこと
- 植栽層
- 無機質7:有機質3が扱いやすい
- 仕切り
- 鉢底ネットかウールマット。省略しない
結論:3層構造にすれば根腐れはほぼ防げる
| 層 | 役割 | 厚みの目安 | 主な素材 |
|---|---|---|---|
| 植栽層(上) | 根を張らせる | 高さの1/4〜1/3 | 溶岩石・軽石・ゼオライト・水苔・ヤシガラ |
| 仕切り(中) | 土の落下を止める | 1〜2mm | 鉢底ネット・ウールマット・防虫ネット |
| 排水層(下) | 余剰水を受ける | 高さの1/5〜1/4 | 軽石・溶岩石・ハイドロボール |
パルダリウムの底床は、観葉植物の鉢で言えば「排水穴のない鉢に鉢底石を敷いている」状態です。排水穴から水が出ていかないぶん、排水層は水を溜める役割を担います。
ここで決定的に重要なのが、水位を排水層の上端より下に保つこと。水位が仕切りを越えて植栽層に届いた瞬間、根は常時水没し、酸欠から腐敗が始まります。

「根は水に触れてはいけない」わけじゃない。酸素のない水に浸かり続けるのが問題なんだ。排水層の中で水位が上下して空気が入れ替わるなら、根が少し伸びてきても意外と平気だよ。
Pick Up — この記事で使う培地
層ごとの素材選び
排水層:無機質で、粒が潰れないもの
排水層に求められる条件は3つです。
- 粒同士の隙間が大きい(水と空気が通る)
- 時間が経っても崩れない(潰れると隙間が消える)
- 有機物を含まない(水中で腐敗しない)
| 素材 | 隙間 | 耐久性 | 重さ | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 軽石(日向石)大粒 | ◎ | ○ | 軽い | 最も安価で入手しやすい |
| 溶岩石 | ◎ | ◎ | やや重い | 微細孔にバクテリアが定着する |
| ハイドロボール(LECA) | ○ | ◎ | 軽い | 粒が揃い見た目が整う |
| 赤玉土 | △ | × | 重い | 不可。水中で崩れて泥になる |
| 鹿沼土 | △ | × | 軽い | 不可。崩れやすく酸性に傾く |
赤玉土・鹿沼土は観葉植物の鉢では定番ですが、常時水に接する排水層では数ヶ月で潰れて目詰まりします。パルダリウムの排水層には使わないでください。
仕切り:1枚入れるだけで寿命が変わる
排水層の上に土を直接乗せると、細かい粒子が隙間に落ちて排水層を埋めます。鉢底ネット、園芸用のウールマット、目の細かい防虫ネットのいずれかを、容器の底面サイズに切って敷いてください。
水を壁面に流す構成にする場合は、ポンプの吸い込み口にもスポンジフィルターを付けておくと詰まりを避けられます。
植栽層:無機質を主体に、有機質を少しだけ
植栽層は「根を支え、水を保ちつつ、酸素が届く」状態を作る層です。パルダリウムは常時高湿度なので、一般的な鉢植えよりも無機質の比率を高くするのが基本になります。
扱いやすい植栽層の配合
- 溶岩石・軽石(小〜中粒)
- ゼオライト
- 水苔またはヤシガラ繊維
- ベラボン・バークチップ
有機質(水苔・ヤシガラ・バーク)を3割程度に抑えると、保水性を確保しながらカビと腐敗のリスクを下げられます。苔を主役にするレイアウトや、ジュエルオーキッドのような着生寄りの植物を入れる場合は、有機質をさらに減らして水苔を薄く敷く構成が安定します。
溶岩石+ゼオライトという選択肢
排水層と植栽層の両方に使えて、かつ水を汚しにくい素材として便利なのが、溶岩石とゼオライトを組み合わせた無機系培地です。
- 溶岩石:多孔質で通気路を確保し、微細孔にバクテリアが定着して生物的な浄化が起きる
- ゼオライト:イオン交換によりアンモニアなどを吸着し、水の汚れと臭いを抑える
tokyoplants の HYDRO MINERAL 2L|溶岩石×ゼオライトの培地(¥1,480)は、富士山の溶岩石75%と島根県産ゼオライト25%をブレンドし、緩効性肥料のオスモコートを配合した培地です。配合肥料により8〜9ヶ月は追肥が不要で、植栽層の素材としてそのまま使えます。
素材ごとの性質の比較はハイドロカルチャーの培地おすすめ比較|LECA・溶岩石の違い、単体素材としての特性は溶岩石の使い方・ゼオライトの効果で詳しく解説しています。
水位をどこに置くか
水位の確認方法
透明な容器であれば外から見えますが、底床で隠れる場合は給水・排水用のパイプを1本立てておくと管理が楽になります。細い塩ビパイプや、片側を切ったストローを排水層まで差し込んでおけば、そこから水位を目視でき、スポイトで吸い出すこともできます。
足し水の頻度
水場のあるパルダリウムは水が蒸発し続けるため、定期的な足し水が必要です。頻度は容器のサイズ・換気量・照明の熱量で大きく変わるので、水位を見て決めるのが唯一の正解になります。足し水には水道水をそのまま使っても植物には問題ありませんが、ガラス面に白い水垢(水道水のミネラル分由来)が残るのが気になる場合は精製水を使うと目立ちにくくなります。

足し水のタイミングは「曜日で決める」より「水位の線を1本引いておく」ほうが確実だよ。季節や照明時間で蒸発量はけっこう変わるから、決まった頻度に合わせようとすると合わなくなるんだ。
壁面(バックボード)の素材
パルダリウムの魅力は、壁面に植物を着生させた立体的なレイアウトです。壁面に使われる主な素材を整理します。
ヘゴ板・ヘゴ付け素材
- 保水性: 高い
- 着生: 根が入り込みやすい
- 注意: 原料の木生シダは種によりCITES附属書IIに掲載。代替素材が増加中
コルク樹皮
- 保水性: 低め
- 着生: 凹凸が多く活着しやすい
- 注意: 軽く水に浮くため固定が必要
造形材(ピートモス系)
- 保水性: 非常に高い
- 着生: 貼り付け・植え込みが自由
- 注意: 有機質のため通気が悪いとカビやすい
造形材は自由に形を作れる反面、ピートモスなどの有機質を主体とするため、換気が不足するとカビの発生源になります。壁面に水を流す構成にして常に水が動く状態にするか、ファンで風を当てる前提で使ってください。
よくある失敗例
排水層が薄すぎる
容器の高さに対して排水層が1〜2cmしかないと、少しの足し水で水位が植栽層に届きます。最低でも3cm、容器高さの1/5は確保してください。
仕切りを省略した
最も多い失敗です。半年ほどで排水層が泥で埋まり、水が抜けない泥底になります。こうなると底床を全部やり直すしかありません。
赤玉土を排水層に使った
鉢植えの感覚で赤玉土を底に敷くと、水中で崩れて微塵になります。排水層は必ず崩れない素材で組んでください。
植栽層が厚すぎる
植栽層を厚く盛ると、下層まで酸素が届かず嫌気的な層ができます。小型の植物であれば植栽層は3〜5cmで十分です。大きな株を植えたい場合は、底床に厚みを足すのではなく、鉢のまま底床に埋め込む方法(鉢を隠すレイアウト)のほうが安全です。
一度組んだら一生もつと思っている
有機質を含む植栽層は徐々に分解が進み、数年で目詰まりします。植物の調子が落ちてきた、水の抜けが悪くなった、臭いが出てきたといった兆候が出たら、植栽層の入れ替えを検討してください。土のにおいの原因で解説している嫌気臭(ドブのような臭い)は、底床が限界に来ているサインです。
まとめ
- パルダリウムの底床は排水層・仕切り・植栽層の3層で設計する
- 排水層は無機質で崩れない素材(軽石・溶岩石・ハイドロボール)。赤玉土・鹿沼土は不可
- 水位は排水層の上端を超えない。パイプを1本立てておくと管理が楽
- 植栽層は無機質7:有機質3が目安。腐葉土・黒土系の培養土は使わない
- 生体を入れる場合は、肥料を含まない培地を選ぶ
植栽層の素材を1種類で済ませたい場合は、HYDRO MINERAL 2L|溶岩石×ゼオライトの培地のような配合済みの無機系培地が扱いやすい選択肢になります。容器づくり全体の流れは植物テラリウムの作り方|容器選びと植え込みを参照してください。
この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi / tokyoplants
tokyoplants オーナー
東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。
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