洋蘭バークとは|樹皮が根に効く理由
Contentsこの記事の内容8項目
胡蝶蘭やカトレアの鉢に入っている、茶色くてゴロゴロした木の皮のような粒。観葉植物用の培養土にも「バーク」「蘭の樹皮」として配合されていることがあります。赤玉土やパーライトのように役割がイメージしやすい資材と違い、樹皮だけは何をしているのか想像しづらい素材ではないでしょうか。
この記事は、特定の植物の育て方でも配合レシピでもなく、「洋蘭バークという素材そのもの」を解説します。何の木の皮なのか、なぜ鉢に入れるのか、そして樹皮を含む培地に必ず付いてくる注意点までを整理します。
- 正体
- 洋蘭の植え込み材として流通する樹皮。主流はニュージーランド産ラジアータパイン(松)
- 役割
- 粗い粒が空気の通り道をつくり、粒自体は水を抱える
- 選び方
- 粒の大きさ(グレード)で通気と保水のバランスが変わる
- 注意点
- 木質の分解に微生物が窒素を使うため、窒素が不足しやすい
- 配合比
- I'm original SOIL では20%(6素材中3番目)
結論:バークは「隙間をつくりながら、粒自体が水を持つ」珍しい素材
鉢の中の素材は、ざっくり言うと二択を迫られます。ピートモスやみじんのような細かい素材は水をよく持ちますが、そのぶん空気の層を失います。軽石やパーライトのような無機の粒は隙間をつくりますが、水はほとんど持ちません。
樹皮は、この二択の真ん中に立てる数少ない素材です。
- 粒が大きく平たいので、粒と粒のあいだに空気の道が残る(通気)
- 粒そのものがスポンジ状で水を含む(保水)
- 有機質なので、年単位でゆっくり分解していく
そして、最後の「分解していく」という性質が、そのまま注意点にもなります。ここを知らずにバークを足すと、葉色が抜けていく原因になります。
Pick Up — この記事で使う用土
洋蘭バークとは何の樹皮か
先にひとつ、名前の話を整理しておきます。
蘭そのものに樹皮はありません。 洋蘭の多くは樹上に着生する草本で、木のような樹皮を持つ器官はありません。それでも「蘭の樹皮」「オーキッドバーク(orchid bark)」という言い方が定着しているのは、蘭の植え込み材として流通してきた規格の樹皮という意味で使われているからです。
では中身は何の木の皮なのか。洋蘭用として世界的に流通しているバークの主流は、ニュージーランド産のラジアータパイン(Pinus radiata)の樹皮です。ラジアータパインはニュージーランドで大規模に植林されている針葉樹で、製材の副産物として樹皮が大量に出ます。洋蘭用バークが安定供給されている背景には、この事情があります。
tokyoplants の『 I'm original SOIL(tokyoplantsプレミアム培養土) 』に配合している樹皮も、このニュージーランド産ラジアータパインの樹皮で、Besgrow/Daltons が展開する「Orchiata」という製品です。
販売元が公開している仕様
Orchiata について、オーストラリアの取扱店の商品ページ(AusPots、2026年10月26日確認)には次の記載があります。以下はメーカー公式サイトではなく販売元の商品説明に基づく情報である点を、先にお断りしておきます。
"100% pure New Zealand Pinus Radiata Bark." (100%純粋なニュージーランド産ラジアータパイン樹皮)
"During the bark's ageing process, beneficial micro-organisms proliferate and any pathogens are eliminated." (樹皮の熟成(ageing)の過程で有用微生物が増殖し、病原菌は排除される)
"Outer bark holds water and nutrients; inner bark remains stable." (外皮が水と養分を保持し、内皮は安定したまま残る)
ひとつ補足します。上の「熟成の過程で病原菌が排除される」は、出荷前の製造工程についての説明です。鉢に入れたあと病気を防ぐ、という意味ではありません。当社もその点を検証しておらず、本記事では病害に関する効果を製品の性質として扱いません。
粒の大きさ(グレード)で性質が変わる
洋蘭バークは粒の大きさでグレードが分かれており、同じ原料でも通気と保水のバランスが変わります。Orchiata の場合、販売元は各グレードの気相率(AFP:air-filled porosity)と保水率(WHC:water holding capacity)を次のように公開しています。
| グレード | 粒径 | AFP(気相率) | WHC(保水率) | 想定用途(販売元の説明) |
|---|---|---|---|---|
| Precision | 3〜6mm | 43〜50% | 52% | 若い株・フラスコ出し苗 |
| Classic | 6〜9mm | 47〜52% | 55% | 若い株・2回目の植え替え |
| Power | 9〜12mm | 49〜53% | 56.8% | 若い株〜成株 |
| Power+ | 12〜18mm | 50〜54% | 56.8% | 成株・より通気が要る種 |
| Super | 18〜25mm | 51〜55% | 56.8% | 成株・高い通気が要る種 |
粒が大きくなるほど気相率が上がり、保水率は途中から頭打ちになります。「バーク」とひとくくりにせず、粒のサイズまで見るのが選び方のコツです。

同じ樹皮でも、粒を変えるだけで気相率が10ポイント近く動く。配合を考えるときは素材名より先に「どのサイズを使うのか」を決めたほうが早い。
なぜ着生植物の培地に樹皮を使うのか
バークが蘭の植え込み材の定番になっている理由は、粒の粗さにあります。
培地の通気性について、米国植物病理学会誌 Plant Disease に掲載された樹皮培地のレビューに、具体的な数値があります(Hoitink, H.A.J. 1980. "Composted Bark, A Lightweight Growth Medium." Plant Disease 64:142-147. DOI: 10.1094/PD-64-142)。1980年の、施設園芸・苗木生産を対象とした研究です。
"Various neutral aggregates are used to adjust the air-filled pore space to 15-25% in 10-15-cm tall containers." (高さ10〜15cmの鉢で気相率が15〜25%になるよう、各種の中性骨材で調整する)
「気相率」は、水やり後に水が抜けきった状態で培地中に残る空気の割合です。これが足りないと根は呼吸できません。
興味深いのは、どの大きさの粒がこれを担っているかに論文が触れている点です。樹皮の供給元が粗い粒を景観用マルチとして選別して抜いてしまった結果、こうなったと記されています。
"This decreased the percentage of particles in the 12-18 mm range and resulted in inadequate aeration of media and inacceptable rates of plant growth." (これにより12〜18mmの範囲の粒の割合が減り、培地の通気が不十分になって、生育速度が許容できない水準に落ちた)
12〜18mm。 先ほどのグレード表でいえば、成株向けの Power+ がちょうどこの範囲です。40年以上前の現場の失敗と、現在のバークが粒径ごとに気相率を管理していることは、同じ一点を指しています。樹皮は「有機質だから良い」のではなく、その大きさの粒が残っているから通気を担える素材なのです。粒が細かくなるほど、樹皮は樹皮らしさを失っていきます。
一方で論文は、樹皮と砂だけの培地では易効性の水分と水分の緩衝能が足りず、ピートなどを混ぜる必要があるとも述べています。樹皮は単独で完結する素材ではなく、細かい保水材と組み合わせて初めてバランスするというのが、当時から変わらない前提です。
| 素材タイプ | 得意なこと | 単独で使ったときの弱点 |
|---|---|---|
| バーク(粗い有機質) | 隙間をつくりながら粒自体も保水 | 細かい保水力と水分の緩衝能が不足 |
| ピートモス・ヤシ繊維(細かい有機質) | 水と肥料を保持 | 詰まると空気の層を失う |
| 日向石・パーライト(無機の粒) | 崩れない隙間をつくる | 水も肥料もほとんど持たない |

バークが多い土に替えると、同じ鉢でも乾くスピードが変わるよ。前と同じ間隔で水をあげる前に、指を2〜3cm入れて確かめてみて。水やりの間隔は記録をつけると季節ごとのクセが見えてくる(Green Collection の水やり記録でもいいね)。
樹皮を含む培地で起きやすい「窒素飢餓」
ここが、バークを扱ううえで最も重要なポイントです。
樹皮は鉢の中で少しずつ分解されていきます。そして、木質を分解する微生物はそのために窒素を使います。 前掲の論文には、木部(白っぽい木質部分)の混入が多い樹皮培地で起きた現象として、次の記述があります。
"chronic nitrogen deficiency occurred on plants because of immobilization of nitrogen in the medium for decomposition of the wood." (木部の分解のために培地中の窒素が微生物に取り込まれ、植物に慢性的な窒素欠乏が生じた)
「窒素飢餓」と呼ばれる現象です。肥料をやっても微生物に先に使われるため、葉が全体的に薄い黄緑になり、肥料を足しても戻りにくいという形で現れます。バークの割合が高いほど、また樹皮に木部が多く混ざっているほど起こりやすくなります。
洋蘭用に選別されたバークは、この点に対処した設計になっています。Orchiata の販売元は技術値のひとつとして "Nitrogen fixed for stable EC"(ECを安定させるため窒素を固定済み)と記載しており、粒についても "resistant to chipping and composting, lengthening repotting time"(砕けにくく分解しにくいため植え替え間隔が延びる)と説明しています。ただし、これらは販売元の商品説明であり、「だから窒素不足は起きない」と言い切れるものではありません。 有機質である以上、長く使えば分解は進みます。

葉が全体的に薄い黄緑になって、肥料をやっても戻らない。そういうときは肥料不足そのものじゃなく、土の中の木質に窒素を先取りされていることがある。
I'm original SOIL が養分源を内蔵している理由
この性質を踏まえると、バークを含む配合土で土自体に養分を持たせておく設計には意味があります。
I'm original SOIL はミミズ堆肥を10%配合しており、化学肥料を使わずに元肥の役割を担わせています。バーク20%という構成で、植え替え直後から追肥を気にせず使えるようにする狙いです。バークの分解による窒素の取り合いを完全に打ち消せるという意味ではありませんが、樹皮を含む培地に養分源をあらかじめ入れておくのは、理にかなった組み合わせです。
長く育てていて葉色が薄くなってきた場合は、通常どおり追肥で補ってください。
「バーク堆肥」とは何が違うのか
園芸店には「バーク堆肥」という商品も並んでいます。洋蘭バークとは別物です。
| 洋蘭バーク(植え込み材) | バーク堆肥(土壌改良材) | |
|---|---|---|
| 粒の状態 | 粗い粒の形が残る | 細かく崩れ、黒っぽい |
| 主な狙い | 通気・排水・根の足場をつくる | 腐植を供給して土を改良する |
| 使い方 | 鉢の中身そのもの、または配合の一部 | 花壇・菜園の土にすき込む |
| 主な対象 | 蘭・着生植物・通気を要する鉢植え | 庭土・畑土 |
どちらが優れているという話ではなく、狙いが正反対です。植え込み材としてのバークは「粗い粒の形が残っていること」自体が価値であり、分解が進んで細かくなるほど役目を終えていきます。先ほど引いた「砕けにくく分解しにくい」という説明が長所として語られるのは、そのためです。逆にバーク堆肥は、分解を進めて腐植にすることが目的の資材です。
なお、前掲の Hoitink 論文には「堆肥化した樹皮が一部の病原菌を抑制した」という報告も含まれていますが、これは堆肥化(composted)した樹皮を樹皮主体の割合で配合した培地についての、1980年の施設園芸での知見です。 抑制されなかった病原菌も同時に報告されており、論文自身が機構は分かっていないと述べています。洋蘭バークは堆肥化させない資材であり、話の前提が異なります。当社はこの点について検証を行っておらず、本記事では病害抑制を製品の性質として扱いません。
I'm original SOIL におけるバーク20%の位置づけ
『 I'm original SOIL(tokyoplantsプレミアム培養土) 』は、6種の天然素材を配合した観葉植物用の培養土です。蘭の樹皮(洋蘭バーク)はそのうち20%を占めます。
I'm original SOIL の配合
- ヤシの繊維(ココチップ)
- 日向石
- 蘭の樹皮(洋蘭バーク)
- ミミズ堆肥
- ピートモス
- パーライト
バーク20%は、単独で働いているわけではありません。論文が指摘していた「樹皮だけでは細かい保水力と緩衝能が足りない」という課題に対して、ほかの素材が役割を分けています。
| 素材 | 比率 | 主な役割 |
|---|---|---|
| ヤシの繊維(ココチップ) | 30% | 粗めの有機質として保水の主役を担う |
| 日向石 | 20% | 崩れにくい無機の粒で隙間を確保する |
| 蘭の樹皮(洋蘭バーク) | 20% | 粗い粒径で通気を残しつつ、粒自体が水を抱える |
| ミミズ堆肥 | 10% | 有機の養分源(化学肥料不使用の元肥) |
| ピートモス | 10% | 細かい保水材として水分の緩衝を担う |
| パーライト | 10% | 軽量化と通気の底上げ |
有機質がおよそ7割を占める構成で、無機質主体の用土とは設計の方向性が異なります。この違いそのものは有機培養土と無機質培養土はどっちがいい?で整理しています。
よくある失敗・勘違い
1. マルチング用バークチップを用土に混ぜる
見た目が似ていても、装飾用のバークチップは粒が大きく木質を多く含むことがあり、用土に混ぜると窒素飢餓の原因になります。敷くための資材と、混ぜるための資材は分けて考えてください。
2. 「バーク入り=洋蘭にも使える」と考える
バークが入っていることと、洋蘭に使えることは別の話です。胡蝶蘭やカトレアが求めるのはバーク主体・高排水の粗い用土で、保水性を持たせた観葉植物用の培養土とは設計思想が異なります。洋蘭の用土については洋蘭(胡蝶蘭など)の土は観葉植物と何が違う?をご覧ください。
3. 「通気が良くなるから」と自作配合で足しすぎる
バークの割合を上げるほど乾きが早くなり、細かい保水材が不足して水やりがシビアになります。加えて、前述のとおり窒素も取られます。自分で配合する場合の考え方はアロイドミックスとは|配合レシピと市販ブレンド済み用土比較にまとめています。
4. バークが崩れてきたのを「土が悪い」と判断する
バークは有機質なので、年単位でゆっくり分解して細かくなっていきます。これは素材の性質であって不良ではありませんが、細かくなった分だけ通気は落ちます。粒の形が見えなくなり、水やり後に水が抜けにくくなってきたら植え替えのサインです。判断の目安は観葉植物の土はいつ替える?を参考にしてください。

バークが崩れた土は、見た目が大きく変わらないのに乾きだけが遅くなることがあるよ。「最近なかなか乾かないな」と感じたら、水を減らす前に土の状態を疑ってみて。
まとめ
- 「洋蘭バーク」は、蘭の植え込み材として流通してきた規格の樹皮。蘭そのものの樹皮ではない
- 主流はニュージーランド産ラジアータパイン(松)の樹皮。I'm original SOIL が使っているのも同じ原料(Besgrow/Daltons の Orchiata)
- 粒の大きさ(グレード)で気相率と保水率が変わる。素材名だけでなくサイズまで見る
- 論文も12〜18mmの画分が通気を担うと記しており、粒径を管理する意味は40年以上前から変わっていない
- 一方で樹皮は分解の過程で窒素を取り込むため、窒素が不足しやすい。バークを足すときは養分の設計をセットで考える
素材の性質がわかると、培養土の原材料欄が「読める」ようになります。tokyoplants の『 I'm original SOIL(tokyoplantsプレミアム培養土) 』は、この洋蘭バーク20%を含む6種の天然素材を配合し、ミミズ堆肥で養分源まで持たせた観葉植物用の培養土です(2L ¥1,200/10L ¥4,800)。資材を買い揃えて比率を計算する手間なく、そのまま植え替えに使えます。
ほかの資材の解説は培養土の原材料は何でできている?、土選び全体の地図は観葉植物の土 完全ガイドからたどれます。
参考文献・出典
- Hoitink, H.A.J. (1980) "Composted Bark, A Lightweight Growth Medium." Plant Disease 64:142-147. DOI: 10.1094/PD-64-142(全文は米国シャクナゲ協会誌 JARS 36(2) への転載版が公開されています)
- Orchiata の仕様・グレード別の数値:AusPots 商品ページ(2026年10月26日確認。メーカー公式ではなく販売元の商品説明です)
- 配合比率:I'm original SOIL(tokyoplantsプレミアム培養土)商品ページ
この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi / tokyoplants
tokyoplants オーナー
東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。
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