地域別・観葉植物の冬越し難易度マップ
「冬は10℃を下回らないように」という言葉は、どの育て方の記事にも出てきます。ところがこの一文が意味する労力は、住んでいる場所によってまったく違います。那覇では何もしなくても達成される条件が、札幌では暖房を切った深夜に真っ先に破られます。
この記事は、気象庁が公表している平年値(1991〜2020年)という公開データを整理したものです。tokyoplantsが独自に実験や室内温度の測定を行ったものではなく、観測値の読み解きと、そこから導かれる一般的な対策の整理に徹しています。室内の実際の温度は住宅の断熱性能・暖房の使い方・階数で大きく変わるため、最終的な判断は必ずご自宅の温度計で行ってください。
- 出典
- 気象庁の平年値(1991〜2020年)のみを使用
- 寒冷地
- 温度に加えて乾燥と光量不足が課題
- 温暖地
- 暖房を切る夜の窓際の冷えが主な課題
- マンション
- 地域と無関係に乾燥と水のやりすぎ
- 見落とし
- 札幌・仙台は2月も1月と同水準
- 出発点
- 外気ではなく「自宅の最低室温」を測る
結論:外気の差は約21℃、しかし勝負を分けるのは「暖房を切っている時間」
気象庁の平年値では、1月の日最低気温は札幌が**-6.4℃、那覇が14.9℃**で、その差は21.3℃あります。ただし観葉植物が置かれるのは室内なので、この外気の差がそのまま室温の差になるわけではありません。
地域別の冬越し難易度を実質的に決めているのは、次の3点です。
- 暖房を切っている時間帯に、室温がどこまで落ちるか(外気が低いほど落ちる幅が大きい)
- 暖房を入れている時間が長いほど、乾燥と温度差のストレスが増える(寒冷地ほど深刻)
- 冬の日照時間が短い地域は、温度を保てても光が足りない
つまり寒冷地の課題は「温度を上げること」だけでなく、「上げた結果生じる乾燥と暗さに対処すること」まで含まれます。逆に温暖地の課題は、暖房をあまり使わないぶん窓際の冷え込みが直撃することです。難易度の質そのものが違います。

外の気温より先に知るべきなのは、朝いちばん冷える時間の自分の部屋の温度。最低温度を記録してくれる温湿度計を1台置くだけで、この記事の表より正確な「自分用の地図」ができるよ。
主要8都市の1月の気温(平年値)
以下はすべて気象庁「過去の気象データ」の平年値(統計期間1991〜2020年)から引用した、1月の日最低気温の平均です。日最高・日平均も併記しています。
| 都市 | 日最低(1月) | 日平均(1月) | 日最高(1月) | 12月の日最低 | 2月の日最低 |
|---|---|---|---|---|---|
| 札幌 | -6.4℃ | -3.2℃ | -0.4℃ | -4.0℃ | -6.2℃ |
| 仙台 | -1.3℃ | 2.0℃ | 5.6℃ | 0.9℃ | -1.1℃ |
| 東京 | 1.2℃ | 5.4℃ | 9.8℃ | 3.8℃ | 2.1℃ |
| 名古屋 | 1.1℃ | 4.8℃ | 9.3℃ | 3.4℃ | 1.4℃ |
| 大阪 | 3.0℃ | 6.2℃ | 9.7℃ | 5.3℃ | 3.2℃ |
| 広島 | 2.0℃ | 5.4℃ | 9.9℃ | 4.0℃ | 2.4℃ |
| 福岡 | 3.9℃ | 6.9℃ | 10.2℃ | 5.8℃ | 4.4℃ |
| 那覇 | 14.9℃ | 17.3℃ | 19.8℃ | 16.8℃ | 15.1℃ |
出典:気象庁「過去の気象データ検索」平年値(1991〜2020年)各地点の月ごとの値。
この表から読み取れることは3つあります。
第一に、東京・名古屋・広島・大阪はほぼ同じ帯にいます。1月の日最低気温が1〜3℃で、暖房を切っても室内が氷点下になることはまれです。一方で、無暖房の部屋が5〜8℃まで落ちることは十分ありえます。
第二に、札幌と仙台は明確に別の条件です。札幌は1月・2月の日最低が-6℃台で、暖房のない部屋は氷点下になりえます。この地域では「暖房のない部屋に置く」という選択肢がそもそも成立しません。
第三に、最も寒いのは1月ではなく2月の地域がある点です。札幌の2月の日最低は-6.2℃で1月とほぼ同じ、仙台も-1.1℃と横ばいです。「1月を乗り切った」と気を抜くタイミングが、実は最も危険な時期にあたります。
自宅の冬越し難易度を割り出す手順
平年値の表は目安です。実際に必要な対策を決めるには、自宅の数字を1週間だけ取れば足ります。
- 1最低温度を記録できる温湿度計を用意する置いたあとに「その期間の最低値」を表示できるタイプを選ぶ。1台1,000〜2,000円台から入手できる
- 2最も条件の悪い場所に置く窓際・床の上・北向きの部屋など、鉢を置いている中で最も冷えそうな位置。人の目線の高さではなく、鉢と同じ高さに置く
- 3晴れた日ではなく冷え込む日を含めて1週間曇天や寒波の日を含む期間で測る。暖かい日だけの記録では判断を誤る
- 4毎朝、最低値を書き留めてリセットする1週間ぶんの最低値を並べると、自宅の「底値」が見える
- 5耐寒ラインと突き合わせる底値が15℃を下回るなら寒さに弱い種の移動、10℃を下回るなら全体の対策、5℃を下回るなら加温が必要という順に判断する
この記録があれば、次の3類型のどれに当てはまるかを地域名ではなく数字で決められます。
3類型ごとの対策セット
地域と住環境を組み合わせると、実務的には次の3類型に整理できます。自分がどれに当てはまるかで、揃える道具が変わります。
A|寒冷地型
- 該当: 北海道・東北・北陸・内陸の高地
- 1月の外気最低: -6〜-1℃前後
- 主な脅威: 夜間の急激な冷え込みと暖房による乾燥
- 必須: 暖房のある部屋へ集約、窓から離す、床冷え対策
- 推奨: 小型温室+ヒーター+サーモ、加湿、育成ライト
- 最も多い失敗: 窓辺に置いたまま夜を越す
B|温暖地型
- 該当: 関東〜九州の平野部
- 1月の外気最低: 1〜4℃前後
- 主な脅威: 暖房を切る夜間の窓際の冷え
- 必須: 夜だけ窓から1m離す、カーテンの内側に置かない
- 推奨: 断熱鉢カバー、不織布、床から離す鉢台
- 最も多い失敗: 「関東だから大丈夫」と窓辺に固定
C|都市部マンション型
- 該当: 地域を問わない鉄筋コンクリート中〜高層階
- 1月の外気最低: 地域による
- 主な脅威: 温度ではなく乾燥と光量不足
- 必須: 加湿、暖房の風が直撃しない配置
- 推奨: 育成ライト、温湿度計での湿度管理
- 最も多い失敗: 暖かいので夏と同じ頻度で水をやる
C(都市部マンション型)は地域とは独立した類型です。断熱性の高い集合住宅では、札幌でも無暖房の室温が10℃を大きく下回らないことがあります。逆に、温暖地であっても木造戸建ての北側の部屋はAに近い挙動をします。地域名ではなく、自宅の最低室温がどのレンジにあるかで類型を選んでください。

Cの型で一番多いのが根腐れだ。暖かくて葉は元気に見えるが、光が足りないぶん水を使う量は夏の半分以下になっている。暖かい=よく乾く、ではない。土を触って確かめる回数を増やせ。
地域別・冬支度のカレンダー
以下は平年値をもとにした一般的な目安です。実際の作業は、その年の天気予報の最低気温を見て前後させてください。取り込み時期そのものの判断基準は観葉植物を室内に入れる時期で、夜間最低気温15℃と10℃の2段階ラインとして整理しています。
作業の順序としては、次の流れになります。
| 時期の目安 | 寒冷地(北海道・東北) | 温暖地(関東〜九州) |
|---|---|---|
| 屋外株の取り込み開始 | 9月上旬〜中旬 | 10月中旬〜11月 |
| 施肥の終了 | 9月中 | 10月中 |
| 窓際からの移動・置き場所の見直し | 10月中 | 11月中 |
| 水やり間隔の冬モードへの切り替え | 10月下旬 | 11月下旬 |
| 加温機器の稼働開始 | 10月下旬〜11月 | 12月(必要な場合) |
| 最も警戒すべき時期 | 1月下旬〜2月中旬 | 1月下旬〜2月上旬 |
| 春の管理再開 | 4月下旬〜5月 | 3月下旬〜4月 |
沖縄はこの表の対象外です。那覇の1月の日最低気温は14.9℃で、多くの観葉植物の耐寒ラインを上回っています。むしろ台風期の管理や、屋外での強光対策のほうが実務的な課題になります。

カレンダーを見ると分かるけど、寒冷地は「冬が長い」のではなく「準備の開始が早い」ことのほうが効いてくる。9月のうちに置き場所を決めておけると、あとがずっと楽になるよ。
難易度が上がるのは「温度」だけではない
冬越しの難しさを温度だけで測ると、判断を誤ります。地域によって効いてくる要素が違うためです。
| 要素 | 寒冷地で起きること | 温暖地で起きること |
|---|---|---|
| 温度 | 無暖房の部屋は危険域。暖房の有無が生死を分ける | 窓際と部屋中央の差が主な問題 |
| 乾燥 | 暖房を長時間使うため相対湿度が大きく下がる | 暖房時間が短く、乾燥の程度は比較的軽い |
| 光 | 日照時間が短く、積雪地では散乱光も減る | 冬でも晴天日が多く、窓辺の光を使いやすい |
| 温度差 | 暖房オン・オフの振れ幅が大きく、株にストレス | 振れ幅は小さい |
| 水やり | 乾燥で表土だけ乾き、中は湿ったままになりやすい | 全体に乾きが遅くなる |
寒冷地で「暖房を強くしたのに葉先が枯れる」という現象が起きるのは、温度が解決した後に乾燥が前面に出てくるためです。加温と加湿はセットで考えてください。
種ごとの耐寒ラインは観葉植物の耐寒性ランキングに、原産地の気候から見た温度の下限は観葉植物417種の原産地・適温・湿度一覧に整理しています。暖房器具そのものの選び方と観葉植物への影響は暖房器具別|観葉植物を冬に枯らさない置き方、温室を加温する機器は温室ヒーター・サーモスタット比較を参照してください。
Pick Up — この記事で使う用土
冬に効いてくるのは、実は秋の土の状態
低温期に最も多い失敗は凍害ではなく、低温+過湿による根の傷みです。気温が下がると植物の吸水量が落ちるため、夏と同じ土・同じ頻度では鉢の中が湿ったままになります。寒冷地ほど暖房で表土だけが乾き、中が湿っているという状態になりやすく、判断を誤りやすくなります。
冬に入ってから植え替えるのは株への負担が大きいので、対策は秋のうちに済ませます。水はけの悪い古い用土を抱えたまま冬に入ると、どれだけ温度を保っても根は動きません。tokyoplantsの「I'm original SOIL(tokyoplantsプレミアム培養土)」は室内管理を前提に水はけと保水のバランスを取った配合で、低温期でも土が締まりにくく、乾湿のリズムを保ちやすい構成です。
よくある誤解
「関東だから冬越しは簡単」。東京の1月の日最低気温は1.2℃で、無暖房の部屋なら十分に危険域に入ります。暖房をあまり使わない地域ほど、夜間の室温は外気に近づきます。
「1月を越えれば安心」。札幌は2月の日最低が-6.2℃と1月とほぼ同じ、仙台も横ばいです。むしろ株が消耗した状態で迎える2月のほうが危険です。
「暖かい部屋に置けば解決」。暖房のある部屋は温度は確保できても、湿度が下がり、暖房の風が直撃すれば葉が乾きます。温度・湿度・風の3点で考えてください。
「地域の平年値=自宅の室温」。平年値は屋外の観測値です。断熱性能・階数・方角で室内の挙動はまったく変わります。最低温度を記録できる温湿度計を1台置くのが最短の解決策です(観葉植物向け温湿度計おすすめ比較)。
「寒いから水を控えればいい」。控える方向は正しいのですが、暖房で表土だけが乾いた状態を「乾いた」と判断すると、結果的に与えすぎになります。鉢の中ほどの湿り気で判断してください。
まとめ
- 1月の日最低気温(平年値・1991〜2020年)は札幌**-6.4℃**、仙台-1.3℃、東京1.2℃、名古屋1.1℃、大阪3.0℃、広島2.0℃、福岡3.9℃、那覇14.9℃
- 札幌と那覇の差は21.3℃。ただし勝負を分けるのは外気ではなく暖房を切っている時間の室温
- 寒冷地は温度に加えて乾燥と光量不足が課題、温暖地は窓際の冷えが主な課題
- 都市部マンションは地域と独立した類型。温度は足りても乾燥と水のやりすぎが問題になる
- 札幌・仙台は2月も1月と同水準。1月を越えても気を抜かない
- 地域の平年値は出発点。自宅の最低室温を測ることが唯一確実な判断材料
出典
- 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(統計期間1991〜2020年)各地点の月ごとの値:https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/
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この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi / tokyoplants
tokyoplants オーナー
東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。
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