温室ヒーター・サーモスタット比較|冬の加温
ヒートマットで鉢底を温め、不織布で鉢を覆い、それでも朝の温室内が8℃までしか上がらない。冬越しの装備をひと通り揃えた人が最後にぶつかるのが「空間そのものが冷えている」という壁です。鉢を包む対策は熱を逃がしにくくするだけで、熱を作り出してはいません。外気が0℃に近づく地域では、どこかで熱源を足す判断が必要になります。
この記事では、小型温室や育成ラックの中を空間ごと温めるヒーターと、それをオン・オフするサーモスタットを扱います。鉢底から温めるヒートマットは観葉植物用ヒートマット比較、棚や温室そのものは植物育成ラック・温室 おすすめ5選、電気を使わない保温は観葉植物の保温グッズ比較で別に解説しています。
- 必ずセット
- ヒーター単体では使えない。サーモ必須
- W数
- 温室の容積から逆算する(外気0℃前提)
- 電気代
- サーモが効くほど連続運転より安くなる
- 設定温度
- 「育てる」ではなく「枯らさない」下限に
- センサー位置
- ヒーターの近くではなく株の高さに
- 落とし穴
- 園芸用サーモの多くは15℃未満に設定できない
結論:150Wクラス+別売サーモの組み合わせが基本、10℃設定したいなら汎用サーモ
0.4㎥前後の小型ビニール温室や育成ラック1段分を冬越しさせるなら、150Wのパネルヒーター+サーモスタットが標準的な構成です。ファンを使わない自然対流式なので動作音がなく、室内の生活空間に置いても気になりません。
ただし、多くの人が見落とすのが設定温度の下限です。園芸用・爬虫類用として売られているサーモスタットは、設定範囲が**15〜40℃**のものが主流です。「観葉植物は最低10℃をキープできればいい」と考えていると、そもそも10℃に設定できず、必要以上に加温して電気代が膨らみます。10℃前後で運転したいなら、設定範囲が氷点下まで伸びている汎用の温度コントローラーを選んでください。
結論
どちらの構成を選ぶか
セット品(SPE-250など)
届いたその日から使いたい
- ✓ヒーターとサーモが最初から組み合わせ済み
- ✓接続の相性を考えなくてよい
- ✓設定温度の下限は15℃のことが多い
- ✓本体のみを買うより総額は高くなりやすい
本体+汎用サーモを別買い
設定温度と予算を自分で決めたい
- ✓10℃前後の低い設定温度を選べる
- ✓サーモは2,999円〜と安く、総額を抑えやすい
- ✓ヒーターのW数とサーモの容量を自分で確認する必要がある
- ✓プローブの設置位置も自分で決める

加温を始める前に、まず今の最低温度を知っておくほうがいい。「寒そうだから」で機械を足すと、実際には13℃あった部屋を18℃まで上げることになって、電気代だけが増えることがあるよ。
Pick Up — この記事で使う用土
W数と適用容積の目安
パネルヒーターのW数は、温める空間の容積で決まります。メーカーが示している適用サイズは外気温0℃を前提とした目安で、温室の材質(ビニールかガラスか)や設置場所によって前後します。
| W数 | メーカーが示す適用温室サイズ | 容積の目安 |
|---|---|---|
| 100W | 約69×49×92cm | 約0.3㎥ |
| 150W | 約120×85×44cm | 約0.4㎥ |
| 250W | 約150×89×49cm | 約0.65㎥ |
出典:昭和精機工業製パネルヒーターの製品仕様(園芸ネットの各製品ページ記載値)。
並べてみると、0.1㎥あたりおよそ30〜40Wという比率になります。自分の温室の内寸(幅×奥行×高さ)をメートルで掛け算して容積を出し、この比率を当てはめれば必要なW数の見当がつきます。
余裕を持たせて大きいW数を選ぶのは悪い判断ではありません。サーモスタットが付いていれば、設定温度に達した時点で通電が止まるため、W数が大きい=電気代が必ず高い、にはならないからです。大きいヒーターは短時間で設定温度に届き、その後は止まっている時間が長くなります。
電気代はいくらか
計算式は次のとおりです。育成ライトの電気代を扱った育成ライトの電気代は月いくら?と同じ考え方で、ここでは単価31円/kWhで試算します。
消費電力(W)÷ 1000 × 使用時間(h)× 電力単価(31円/kWh)= 電気代
150Wを1日24時間・30日連続で動かした場合は、150 ÷ 1000 × 24 × 30 = 108kWh、108 × 31 = 3,348円/月です。
| W数 | 24時間連続(上限) | 稼働率50%の場合 | 稼働率30%の場合 |
|---|---|---|---|
| 100W | 2,232円/月 | 1,116円/月 | 670円/月 |
| 150W | 3,348円/月 | 1,674円/月 | 1,004円/月 |
| 200W | 4,464円/月 | 2,232円/月 | 1,339円/月 |
| 250W | 5,580円/月 | 2,790円/月 | 1,674円/月 |
いずれも31円/kWh・1日24時間・30日での計算です。「稼働率」はサーモスタットが実際に通電している時間の割合を指します。断熱がしっかりした温室を室内に置き、設定温度を10〜12℃に抑えれば稼働率は下がり、逆に玄関や窓際など冷える場所で18℃をキープしようとすれば連続運転に近づきます。
上の表は「最悪でもこの金額」という上限を把握するために使ってください。実際の請求額を知りたい場合は、消費電力モニター付きのスマートプラグを挟むと実測できます。

空気だけ温めても、根が冷えたままなら植物は水を吸えない。鉢が床や金属棚に直置きになっていないか先に確認しろ。鉢底が冷えていると、葉の温度がいくら足りていても根腐れ側に転ぶ。
製品比較
価格・評価は2026年9月26日時点のAmazon.co.jpの表示です。
昭和精機工業 SP-150(150W・本体のみ)
- 種別: パネルヒーター本体
- W数: 150W
- 適用容積: 約0.4㎥
- サーモ: 別売(単体使用不可)
- 方式: アルミフィンの自然対流・ファンレスで無音
- 価格: ¥8,586(★4.3・138件)
- 向く: 小型温室1台。サーモを自分で選びたい人
昭和精機工業 SPE-250(250W・Eサーモ付)
- 種別: ヒーター+サーモのセット
- W数: 250W
- 適用容積: 約0.65㎥
- サーモ: 同梱
- 方式: 自然対流・ファンレス。植木鉢1個分のサイズ
- 価格: ¥20,580(★4.3・123件)
- 向く: 大きめの温室。組み合わせを考えたくない人
昭和精機工業 グリーンサーモ E-300E
- 種別: サーモスタット
- 設定範囲: 15〜40℃
- 精度: ±1.5℃
- 容量: ヒーター300Wまで
- 特徴: センサーがコンパクト。通電確認ランプ付き
- 価格: ¥9,505(★3.8・23件)
- 向く: 昭和精機製ヒーターと確実に揃えたい人
GEX EXOTERRA タイマーサーモ RTT-1
- 種別: タイマー付きサーモスタット
- 設定範囲: 15〜40℃
- 容量: 保温器具・照明器具それぞれ300Wまで
- 特徴: 停電時バックアップ約1時間・昼夜で設定温度を変えられる
- 価格: ¥8,960(★4.5・279件)
- 向く: ライトと保温をまとめて時間制御したい人
INKBIRD サーモスタット(タイマー機能付)
- 種別: 汎用温度コントローラー
- 設定範囲: -40〜100℃(10℃前後の設定が可能)
- 特徴: IP67防水プローブ・停電後の設定保持・高低温アラーム
- 制御: 温度制御/サイクルタイム/カウントダウンの3モード
- 価格: ¥2,999(★4.2・14件)
- 向く: 10℃キープで電気代を抑えたい人
Inkbird ITC-308(2ステージ)
- 種別: 汎用温度コントローラー
- 出力: 加熱側と冷却側の2系統を別々に制御
- 容量: 最大1100W
- 特徴: 温度校正機能・遅延始動保護・高低温アラーム
- 価格: ¥4,699(★3.7・81件)
- 向く: ヒーターと換気ファンを1台で管理したい人
サーモ球(温度センサー)の設置と設定温度
サーモスタットは、センサーが感知した温度でオン・オフします。つまりセンサーをどこに置くかで、温室内の実際の温度が変わります。ここを間違えると、機器が正常でも植物は寒いままです。
- 1ヒーターを温室の低い位置に置く暖かい空気は上へ動く。床置きにすると自然対流で庫内が循環する。ビニールや棚板に密着させないよう、周囲に数cmの空きを取る
- 2センサーを「守りたい株の高さ」に固定するセンサーが感知した温度が基準になる。棚の最上段だけに付けると、最下段の株は設定温度より低いまま運転が止まる
- 3センサーをヒーターから離すヒーターのすぐ近くに置くと、そこだけ早く暖まって短時間で通電が切れ、庫内全体は温まらない。ヒーターと反対側の、最も冷えやすい場所に置くのが安全側
- 4センサーを鉢土や水に挿さない空気温度を測る用途で使う。土に挿すと反応が鈍り、オン・オフの周期が極端に長くなる
- 5設定温度を決める耐寒性の低い株に合わせる。目安は最低10〜15℃。熱帯性のアグラオネマ・カラテアなど15℃を下回ると傷む種を入れているなら15℃、丈夫な種だけなら10〜12℃
- 6温湿度計で答え合わせをするセンサーと別に、庫内の最も冷える場所へ温湿度計を置く。最低温度の記録機能があるものを選ぶと、留守中の底値が分かる
設定温度は「高いほど安全」ではありません。加温すると庫内の湿度が下がり、葉先が乾く原因になります。また冬に生育を無理に続けさせると、光が足りない環境では徒長します。「枯らさないための下限を守る」発想で設定温度を決めるのが、電気代の面でも株の面でも合理的です。
種ごとの耐寒ラインは観葉植物の耐寒性ランキングにまとめています。温湿度計の選び方は観葉植物向け温湿度計おすすめ比較を参照してください。

センサーは棚の「いちばん冷える場所」に置くのがコツだよ。扉のそばや窓に近い側、いちばん下の段が候補になりやすい。そこが設定温度を保てていれば、他の場所はもっと暖かいから安心できる。
加温する前にやること
ヒーターは最後の手段です。同じ電気を使うなら、先に逃げる熱を減らすほうが費用対効果は高くなります。
よくある失敗例
サーモスタットなしでヒーターを使う。最も危険な失敗です。「短時間だから」「見ているから」は理由になりません。本体のみの製品を買ったら、サーモが届くまで通電しないでください。
センサーをヒーターのすぐ隣に置く。設定18℃にしているのに株元は10℃、という状態が起きます。センサーは熱源から離し、守りたい株の高さに置きます。
サーモの容量を超えてヒーターを増設する。150Wを2台つないで300Wにすると、容量300Wのサーモでは余裕がありません。増設時は必ず合計W数で確認します。
設定温度を20℃以上にする。冬の室内は光が足りません。暖かいのに光が弱い環境は、徒長と軟弱化を招きます。冬は「成長させる」のではなく「維持する」温度に設定してください。
加温だけして湿度を放置する。加温すると相対湿度が下がります。葉先が茶色く枯れ込む場合は、温度ではなく湿度が原因のことがあります。
温度を上げたぶん水やりを増やす。庫内が暖かくても、日照が足りなければ吸水量はそれほど増えません。温室に入れたからといって夏と同じ頻度で与えると、過湿側に振れます。土の乾きを確かめてから与えてください。
温めた分だけ、根が動ける土かどうか
加温は「根が動ける温度域に戻す」ための投資です。ところが用土が古く固まって水はけが落ちていると、温度を上げても根は水を吸えず、むしろ湿った土が温まって傷みが早まることがあります。
冬に植え替えを推奨するわけではありませんが、温室に入れる前の秋のうちに用土を整えておくと、加温の効果が素直に出ます。tokyoplantsの「I'm original SOIL(tokyoplantsプレミアム培養土)」は室内管理を前提に水はけと保水のバランスを取った配合で、加温環境でも土が締まりにくく、乾湿のリズムを保ちやすい構成です。
まとめ
- ヒーターはサーモスタットとセットで使う。「増設用」「単体」表記の製品は本体のみ
- W数は0.1㎥あたり30〜40W(外気0℃)。150Wで約0.4㎥、250Wで約0.65㎥が目安
- 電気代はW÷1000×時間×31円/kWh。150W連続で月3,348円が上限、実際はサーモで断続運転になる
- 園芸用・爬虫類用サーモは**設定範囲15〜40℃**が主流。10℃キープしたいなら汎用の温度コントローラー(INKBIRDなど)
- センサーは熱源から離し、守りたい株の高さ・最も冷える場所に固定する
- 設定温度は**10〜15℃**で十分。上げすぎは徒長と乾燥を招く
- 加温の前に窓から離す・床冷えを断つ・隙間を塞ぐの3点を済ませる
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この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi / tokyoplants
tokyoplants オーナー
東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。
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昭和精機工業 園芸温室用 パネルヒーター 150W(温室用ヒーター単体・増設用)SP-150
Amazon評価 4.3 / 138件・¥8,586(2026-09-26取得)。ファンレスの自然対流式で無音。サーモスタットは別売のため単体では使えない

昭和精機工業 パネルヒーター 250W(Eサーモ付)SPE-250
Amazon評価 4.3 / 123件・¥20,580(2026-09-26取得)。ヒーター本体とサーモスタットのセット。買ってすぐ使える

昭和精機工業 グリーンサーモ E-300E(加温用)
Amazon評価 3.8 / 23件・¥9,505(2026-09-26取得)。園芸ヒーター用の定番サーモ。設定範囲15〜40℃・精度±1.5℃・ヒーター容量300Wまで

ジェックス GEX EXOTERRA タイマーサーモ RTT-1
Amazon評価 4.5 / 279件・¥8,960(2026-09-26取得)。制御温度範囲15〜40℃、保温器具・照明器具それぞれ300Wまで。停電時バックアップ約1時間と昼夜のタイマー制御に対応

INKBIRD サーモスタット タイマー機能 加熱冷却両用 サーモコントローラー
Amazon評価 4.2 / 14件・¥2,999(2026-09-26取得)。温度制御範囲-40〜100℃で10℃前後の低めの設定に対応。IP67防水プローブ付き・停電後の設定保持メモリーあり

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Amazon評価 3.7 / 81件・¥4,699(2026-09-26取得)。加熱側と冷却側の2系統を別々に制御できる。最大出力1100W、温度校正・遅延始動保護つき
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