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観葉植物の葉が赤くなる理由|アントシアニンの科学
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観葉植物の葉が赤くなる理由|アントシアニンの科学

by tokyoplants 編集部

フィロデンドロン・レッドコンゴの新葉が鮮やかな赤銅色で展開したり、トラデスカンティア・ゼブリナの葉裏が濃い紫色に染まったり——観葉植物の世界には、緑一色ではない「赤い葉」を持つ品種が数多く存在します。これらの赤色はどのようにして生まれるのでしょうか。この記事では、赤色を生み出す色素「アントシアニン」の仕組みを解説します。

結論

  • 観葉植物の葉が赤〜紫〜銅色になる主な原因は、アントシアニンというフラボノイド系の水溶性色素が葉の細胞に蓄積することである。緑色の色素クロロフィルとは全く別の物質で、両方の色素の量的なバランスによって見た目の色が決まる。
  • 新葉が赤く展開し、成熟すると緑に変わる品種(フィロデンドロン・レッドコンゴ、エルチョコレッドなど)は、若い葉を紫外線や強光から保護するためにアントシアニンが一時的に多く生産される「デレイド・グリーニング(delayed greening/遅延緑化)」と呼ばれる現象の一種と考えられている。
  • 葉全体が恒常的に赤紫色を保つ品種(トラデスカンティア・ゼブリナなど)は、光量や栽培環境によってアントシアニンの蓄積量が変動するため、発色の濃淡は管理者の環境づくり次第で変化する。

アントシアニンとは何か

アントシアニンは、赤ワイン、ブルーベリー、赤キャベツ、紅葉した紅葉の葉などを赤〜紫色に染めるのと同じ系統の色素で、植物界に広く分布するフラボノイド化合物の一種だ。水に溶けやすい性質を持ち、細胞内の液胞(サイトゾルではなく、細胞の中の水分を蓄える袋状の構造)に蓄積される。

葉が緑色に見えるのは、葉緑体に含まれるクロロフィルという色素が緑色の光を反射し、赤色・青色の光を吸収して光合成に利用しているためだ(クロロフィルの仕組み自体はなぜ観葉植物の葉は緑なのかで詳しく解説している)。赤い葉は、このクロロフィルの緑色に、アントシアニンの赤〜紫色が重なることで生じる。アントシアニンの量が少なければ緑が優勢に、多ければ赤紫が優勢に見えるという、いわば2つの色素の足し引きの結果が、私たちが目にする葉の色というわけだ。

白い斑(キメラ)とは全く違うメカニズム

観葉植物の「変わった葉色」というと、モンステラ・アルボバリエガータのような白い斑(バリエガータ)を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、白斑とアントシアニンによる赤色は、根本的に異なる現象だ。

項目 白斑(バリエガータ) 赤・紫色(アントシアニン)
原因 葉緑体の機能喪失・欠如(色素が「ない」状態) アントシアニンという色素が「ある」状態
細胞レベルの仕組み 遺伝的に異なる細胞集団の共存(キメラ)など 特定の遺伝子が発現し色素を合成する生理反応
環境による変化 光・温度でリバージョン(先祖返り)が起こることがある 光量・温度・ストレスに応じて蓄積量が変動する
代表例 モンステラ・アルボ、タイコンステレーション フィロデンドロン・レッドコンゴ、トラデスカンティア・ゼブリナ

白斑の詳しいメカニズムはバリエガータ植物のキメラとは何か——斑入りの科学と安定性の違いを徹底解説で解説している。同じ「葉の色が変わる」現象でも、原因も対処法も全く異なる点は押さえておきたい。

なぜ新葉だけが赤くなるのか——「デレイド・グリーニング」という現象

フィロデンドロン・レッドコンゴやエルチョコレッド、ミカンスのように、新葉が赤〜銅色で展開し、成熟するにつれて緑に変わっていく品種は、観葉植物の中でも特に人気が高い。この現象は熱帯の樹木でも広く見られる「デレイド・グリーニング(delayed greening/遅延緑化)」と呼ばれる現象の一種と考えられている。

熱帯地域の樹種を対象にした研究では、展開直後の若い葉にアントシアニンが多く蓄積し、葉が成熟してクロロフィルの合成が進むにつれて赤みが薄れて緑になっていく現象が広く観察されている。この現象がなぜ起こるのかについては、複数の仮説が提唱されており、どれか一つに完全な決着がついているわけではない。

  • 光保護仮説:展開直後の若い葉は組織が薄く、光合成の仕組みも未成熟なため、強い光や紫外線による酸化ストレスに弱い。アントシアニンが一種の「日焼け止め」として余分な光エネルギーを吸収し、細胞を保護しているという説
  • 食害忌避仮説:赤い色が虫にとって葉を認識しにくくする、あるいは「食べると良くないものが含まれている」というシグナルとして働くという説
  • 栄養節約仮説:クロロフィルなど窒素を多く含む栄養価の高い成分を、食害に遭いやすい若い葉に多く配分することを避けるための戦略という説

観葉植物として流通するフィロデンドロン各種の赤い新葉も、こうした熱帯植物に共通する適応の延長線上にあると考えられている。品種ごとの色変化の詳しい様子はフィロデンドロン・レッドコンゴの育て方図鑑フィロデンドロン・エルチョコレッドの育て方図鑑フィロデンドロン・ミカンスの育て方図鑑で紹介している。

葉全体がずっと赤紫色の品種は何が違うのか

トラデスカンティア・ゼブリナのように、新葉だけでなく成熟した葉も含めて恒常的に赤紫色を保つ品種も存在する。こうした品種では、デレイド・グリーニングのように成長段階でアントシアニンが減少するのではなく、遺伝的に高いアントシアニン合成能力を持つよう選抜・固定された品種であることが多い。それでも、アントシアニンの蓄積量そのものは環境の影響を受けるため、光量が十分な環境で育てるほど紫の発色が濃くなり、光量不足では色が薄れて緑がかっていくという傾向が見られる。詳しくはトラデスカンティア・ゼブリナの育て方で解説している。

また、アグラオネマ・スターダストオレンジのように、赤〜オレンジの発色がカロテノイド系色素(黄〜オレンジ系)とアントシアニンの組み合わせで生まれる品種もあり、色素の種類や組み合わせは品種によって多様だ。詳細はアグラオネマ・スターダストオレンジの図鑑を参照してほしい。ザミオクルカス・レイブンの黒紫色の葉も、同じアントシアニンの大量蓄積によって生まれる現象で、ザミオクルカス・レイブンはなぜ黒い?葉の色素の科学でさらに掘り下げて解説している。

ストレス反応としての赤色化にも注意

アントシアニンの蓄積は、必ずしも「品種本来の魅力」だけを意味するわけではない。緑一色のはずの観葉植物の葉が急に赤紫がかってきた場合、以下のようなストレス要因が引き金になっている可能性もある。

  • 強すぎる光:光阻害(過剰な光エネルギーによる細胞ダメージ)を緩和するための防御反応
  • 低温:寒さによる代謝ストレスへの反応
  • リン(P)などの養分不足:栄養状態の悪化に伴う代謝の変化

品種として恒常的に赤い葉を持つのか、それとも急に赤みが出てきたのかを区別することが、色の変化を「魅力」として楽しむべきか「不調のサイン」として対処すべきかを見極める手がかりになる。

まとめ

  • 観葉植物の赤い葉の正体は、フラボノイド系色素「アントシアニン」がクロロフィルの緑色に重なって生じる色である
  • 白斑(バリエガータ)とは全く異なるメカニズムで、白斑は「色素の欠如」、赤色は「色素の蓄積」という逆の現象
  • 新葉だけが赤くなる品種は「デレイド・グリーニング」という現象の一種と考えられ、紫外線・食害からの保護など複数の仮説が提唱されている
  • 恒常的に赤い品種は遺伝的にアントシアニン合成能力が高く選抜された系統で、発色の濃さは光量など環境の影響を受ける
  • 通常は緑色の株が急に赤みを帯びる場合は、強光・低温・養分不足などのストレス反応である可能性も考慮する

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