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フィロデンドロン属とは|主な品種・育て方・特徴を解説
植物図鑑

フィロデンドロン属とは|主な品種・育て方・特徴を解説

by tokyoplants 編集部

フィロデンドロン属とは

フィロデンドロン属(Philodendron)はサトイモ科に属する常緑植物のグループで、約500種が中南米の熱帯雨林に自生している。観葉植物として流通する属の中では最大級の種数を誇り、つる性から直立性、小型から大型まで極めて多様な形態を持つ。

項目 内容
科名 サトイモ科(Araceae)
属名 フィロデンドロン属(Philodendron
種数 約500種
原産地 中南米の熱帯雨林
生育型 つる性(climbing)または直立性(self-heading)
耐寒温度 多くの種で10℃以上

属の特徴

2つの生育型

フィロデンドロン属は大きく2つのタイプに分かれる。

つる性(climbing type): 気根を使って樹木に着生しながら上方へ伸びる。ヘデラセウム(旧オキシカルジウム)やブラジル、ミカンスなどが代表。支柱やハンギングで仕立てる。

直立性(self-heading type): 太い茎が直立し、ロゼット状に大きな葉を展開する。セロームやクッカバラ、バーキンなどが代表。支柱なしで自立する。

葉の多様性

属内で葉の形態が極めて多様である点が大きな特徴。ハート型、矢じり型、掌状に深く裂けるもの、細長いもの、ベルベット質のものなど、同じ属とは思えないほどのバリエーションがある。

気根と着生

つる性種は茎の節から気根を出し、空気中の水分を吸収しながら支持体に固定する。自然環境では樹木の幹を登り、林冠を目指して成長する。室内ではヘゴ棒やモスポールに誘引すると、葉が大きく展開しやすくなる。


学名の由来と歴史

属名 Philodendron はギリシャ語の "phileo"(愛する)と "dendron"(木)を組み合わせた造語で、「木を愛するもの」を意味する。樹木に着生して成長する生態に由来する。1829年にドイツの植物学者Heinrich Wilhelm Schottが正式に記載した。

ヨーロッパではビクトリア朝時代の温室ブームで人気が高まり、19世紀後半にはプラントハンターたちが南米から多数の種を持ち帰った。日本では戦後の観葉植物ブームとともにセロームやオキシカルジウムが広く普及し、近年はレア品種の人気が高まっている。


主な品種一覧

セローム(P. bipinnatifidum / Thaumatophyllum bipinnatifidum

大型の直立性種。葉は深く切れ込みが入り、幅1m以上になることもある。近年の分類改訂で Thaumatophyllum 属に移されたが、流通名としてフィロデンドロンの名が定着している。耐寒性がやや高く、関東以南では屋外越冬する個体もある。

ヘデラセウム(旧オキシカルジウム)(P. hederaceum

最も普及しているつる性種。ハート型の光沢ある緑葉が特徴。丈夫で耐陰性が高く、初心者向けの代表格。'ブラジル'(黄斑入り)、'ミカンス'(ベルベット質の赤銅色葉)などの品種がある。

バーキン(P. 'Birkin')

直立性のコンパクトな園芸品種。濃緑の葉に白〜クリーム色のピンストライプが入る。突然変異由来の品種で、まれに先祖返りした全緑や半赤の葉が出ることがある。

クッカバラ(P. 'Kookaburra' / P. xanadu

コンパクトな直立性種。セロームを小型にしたような切れ込みのある葉を密に展開する。場所を取らず、デスクや棚上での管理に向く。

ピンクプリンセス(P. erubescens 'Pink Princess')

ダークグリーンの葉にピンク色の斑が入る人気品種。斑の入り方は個体差が大きく、安定した斑入りの株は高額で取引される。光量不足で斑が出にくくなるため、明るい環境での管理が必要。

グロリオサム(P. gloriosum

地面を這うように成長する地生性の種。大きなハート型のベルベット質の葉に、白い葉脈が際立つ。成長は遅いが、葉の美しさから人気が高い。高湿度を好み、乾燥した環境では葉の縁が傷みやすい。

フロリダゴースト(P. 'Florida Ghost')

新葉が白〜ライムグリーンで展開し、成熟とともに緑に変わる。多裂する葉の形状も独特で、コレクター人気が高い。


育て方の共通ポイント

明るい間接光が最適。耐陰性はモンステラ属より高い種が多いが、光量不足では葉が小さくなり、斑入り品種は斑が消失する傾向がある。直射日光は葉焼けの原因になるため避ける。

温度

生育適温は20〜28℃。多くの種で10℃を下回ると成長が停止し、5℃以下で障害が出る。モンステラよりやや寒さに弱い種が多い点に注意。

水やり

成長期(5〜9月)は土の表面が乾いたらたっぷり与える。冬季は土が完全に乾いてから与える。つる性種は直立性種より水分要求量が多い傾向がある。

湿度

熱帯雨林原産のため、高湿度(60%以上)を好む。特にベルベット質の葉を持つ種(ミカンス、グロリオサムなど)は湿度不足で葉先が枯れやすい。葉水や加湿器で補う。

排水性と保水性のバランスが取れた土が適する。赤玉土・鹿沼土・パーライト・ピートモスをベースにした配合、または観葉植物専用土が使いやすい。着生種はバークチップを混ぜると根の通気性が向上する。

肥料

成長期に月1回の緩効性肥料、または2週間に1回の液肥。冬季は不要。過肥は根焼けの原因になるため、規定量を守る。

支柱(つる性種)

モスポールやヘゴ棒に誘引すると、気根が活着し、葉が大きく展開する。支柱なしで垂らして育てることも可能だが、葉のサイズは小さくなる。

植え替え

1〜2年に1回、5〜6月が適期。根詰まりすると成長が鈍り、下葉が黄変する。


よくあるトラブル

葉が黄色くなる

最も多い原因は過湿による根腐れ。次に光量不足、低温ストレス。古い下葉が1〜2枚黄変するのは自然な代謝で問題ない。

葉先・葉縁が茶色くなる

空気の乾燥が主な原因。特にベルベット質の品種で顕著。葉水の頻度を上げるか、加湿器を使用する。肥料焼けでも同様の症状が出る。

茎が間延びする(徒長)

光量不足のサイン。節間が長くなり、葉が小さくなる。明るい場所に移動し、伸びすぎた茎は切り戻す。切った茎は水挿しで発根させ、増やすことができる。

斑が消える(斑入り品種)

光量不足で斑が出なくなることがある。全緑の葉が続く場合は、明るい間接光の場所に移動する。先祖返りした枝は、斑入りの葉が出ている節の上で切り戻す。

根腐れ

排水性の低い土、過剰な水やり、底穴のない鉢が原因。茎の基部が黒く柔らかくなったら根腐れの可能性が高い。鉢から出して腐った根を除去し、排水性の高い土に植え替える。


ベルベット系品種の管理哲学

フィロデンドロン属の中でも、ミカンス・グロリオサム・メラノクリサム・パトリシアエのようなベルベット質の葉を持つ種は、特別な注意が必要である。これらの種は葉面を覆う細かい毛が光を乱反射させ、ビロードのような質感を生み出すが、同時にこの毛が傷みやすく、管理環境の差が葉の美しさに直結する。

最重要ポイントは湿度である。ベルベット系は湿度60〜80%を好み、50%以下の乾燥した環境では葉の縁や先端が茶色く枯れ込み始める。加湿器での湿度管理、またはビニールテントや温室棚での局所的な高湿度環境が理想的。

また、ベルベット系の多くは葉に直接水がかかると水染み(ウォーターマーク)が残りやすい。葉水をする場合は葉の下から噴霧し、葉面に大粒の水滴が残らないよう注意する。直射日光も同様に白抜けの原因になるため、明るい間接光に限定する。

成長はゆっくりした種が多いが、適切な高湿度環境と十分な光量があれば、新葉が展開するたびに徐々に葉が大型化していく。その過程を楽しむことが、ベルベット系フィロデンドロンの醍醐味である。


つる性種のモスポール仕立て

つる性フィロデンドロンの栽培で最も効果的な手法のひとつが、モスポール(水苔を巻いた支柱)への誘引である。気根がモスポールの水苔に活着すると、植物が「着生している」という信号を受け取り、葉のサイズが大幅に大きくなる。

メラノクリサムやスクアミフェルムなど、自然環境で樹木の幹を数十メートル登る種は、支柱への誘引によって葉の面積が2〜3倍に拡大することもある。モスポールは常に湿った状態を保つことで気根の活着を促進できる。毎日霧吹きでモスポールを湿らせると効果的。

支柱なしで垂らして育てることも可能だが、その場合は葉が成熟株サイズに達しにくく、いわゆる「juvenile(幼態)」の葉形のまま維持される種が多い。同じ品種でも仕立て方によって全く異なる印象の株になるため、どちらのスタイルで楽しむかを決めてから方針を一貫させると良い。


まとめ

  • フィロデンドロン属はサトイモ科最大級の属で、約500種が中南米に自生
  • つる性と直立性の2タイプがあり、葉の形態は極めて多様
  • 明るい間接光・高湿度・排水性の高い土が育成の基本
  • つる性種はモスポールに誘引すると葉が大型化する
  • 過湿と乾燥(低湿度)が最も多いトラブル原因
  • 斑入り品種は十分な光量を確保しないと斑が消失する

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