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アンスリウム属とは|主な品種・育て方・特徴を解説
植物図鑑

アンスリウム属とは|主な品種・育て方・特徴を解説

更新by Masashi Matsubuchi
Contentsこの記事の内容10項目
  1. 1アンスリウム属とは
  2. 2属の特徴
  3. 3学名の由来と歴史
  4. 4主な品種一覧
  5. 5種ごとの要求条件は一律ではない
  6. 6育て方の共通ポイント
  7. 7よくあるトラブル
  8. 8花もの・葉ものタイプの選び方
  9. 9繁殖と増やし方
  10. 10まとめ

アンスリウム属とは

At a glance30秒でわかるアンスリウム属
規模
サトイモ科最大の属。1,000種を超えるとされる
分布
中南米の熱帯雨林。着生または地生
2系統
仏炎苞を見る花もの/葉を見る葉もの
温度
種により12〜18℃が下限。一律ではない
湿度
種により50〜80%。ここで難易度が決まる
用土
着生性のため、一般的な観葉植物用土より粗い配合

アンスリウム属(Anthurium)はサトイモ科に属する常緑多年草のグループで、1,000種を超える種が記載されており、サトイモ科で最大の属である(記載種数はデータベースや分類の扱いによって幅がある)。中南米の熱帯雨林に自生し、着生または地生で生育する。光沢のある仏炎苞(ぶつえんほう)を持つ花ものタイプと、ビロード質の大きな葉を観賞する葉ものタイプに大別される。

項目 内容
科名 サトイモ科(Araceae)
属名 アンスリウム属(Anthurium)
種数 約1,000種以上
原産地 中南米の熱帯雨林(コロンビア、エクアドル周辺に多い)
生育型 常緑多年草(着生または地生)
耐寒温度 多くの種で15℃以上

属の特徴

仏炎苞と肉穂花序

アンスリウムの「花」として認識される色鮮やかな部分は、実際には仏炎苞(スパース)と呼ばれる変形した葉である。本当の花は中央の棒状の肉穂花序(スパディックス)に密集しており、非常に小さい。

仏炎苞の色は赤・ピンク・白・緑・紫など多様で、花ものタイプの観賞価値はこの仏炎苞に依存する。仏炎苞は数週間〜数ヶ月色を保つため、「花持ちの良い観葉植物」として人気がある。

クロ
クロ土・植え替え担当POINT

実は仏炎苞そのものは「花」じゃなくて葉が変化したものなんだ。だから切り花のように数日でしおれず、数週間〜数ヶ月も鮮やかな色を保てる。これがアンスリウムの花持ちの良さの正体だよ。

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着生の生態

多くの種が樹木の幹や岩に着生して生育する。根は空気中に露出し、水分と養分を効率的に吸収する。このため、根の通気性を確保する用土選びが栽培の鍵になる。

葉の多様性

花ものタイプは楕円形〜ハート型の光沢ある葉が一般的だが、葉ものタイプには掌状に深く裂ける葉、細長い剣状の葉、ビロード質で葉脈が銀白色に浮き出る葉など、多様な形態が存在する。


学名の由来と歴史

属名 Anthurium はギリシャ語の "anthos"(花)と "oura"(尾)を組み合わせた造語で、尾のように突き出た肉穂花序の形に由来する。1829年にオーストリアの植物学者Heinrich Wilhelm Schottが記載した。

切り花としての利用はハワイで商業化が進み、20世紀前半にハワイの花卉産業の主力品目となった。日本では鉢花として1980年代以降に広く普及し、近年は葉ものタイプのレア品種がコレクター市場で人気を集めている。


主な品種一覧

アンドレアナム系(A. andraeanum hybrids)

最も流通量が多い花ものタイプ。赤・ピンク・白・緑など仏炎苞の色が豊富で、ギフトや室内装飾に広く使われる。丈夫で開花しやすく、適切な管理で年間を通じて花を楽しめる。

クラリネルビウム(A. clarinervium)

葉ものタイプの代表格。ダークグリーンのハート型の葉に、銀白色の葉脈がくっきり浮き出る。ビロード質の質感も美しく、コレクター人気が非常に高い。高湿度を要求するため、テラリウムやクリアケース内での栽培も行われる。

クリスタリナム(A. crystallinum)

クラリネルビウムに似た銀白色の葉脈を持つが、葉がより大型で薄く、光沢がある。交雑しやすく、クラリネルビウムとの交配種も多く流通する。

ワロクアーナム(A. warocqueanum)

「クイーン・アンスリウム」の異名を持つ。細長い剣状の葉は長さ1m以上になり、ダークグリーンにシルバーの葉脈が走る。栽培難易度は高く、高湿度と通気性の両立が必要。

フォルゲティー(A. forgetii)

丸みを帯びた盾状の葉にシルバーの模様が入る。葉の先端が尖らず丸い(頂裂なし)のが特徴。小型で扱いやすく、葉ものアンスリウムの入門種としても人気。

ベイチー(A. veitchii)

「キング・アンスリウム」と呼ばれる大型の葉もの種。波打つ葉の表面は独特の光沢があり、成熟時には1.5〜2mを超えることも珍しくない。成長は遅いが、成熟した株の迫力は圧倒的。

主な品種の比較

品種 タイプ 葉の特徴 サイズ
アンドレアナム系 花もの 光沢のあるハート型葉、仏炎苞の色が豊富 中型
クラリネルビウム 葉もの ダークグリーンに銀白の葉脈、ビロード質 中型
クリスタリナム 葉もの クラリネルビウムに似るがより大型・薄く光沢あり 中〜大型
ワロクアーナム 葉もの 細長い剣状の葉、長さ1m以上 大型
フォルゲティー 葉もの 丸みを帯びた盾状の葉、シルバーの模様 小型
ベイチー 葉もの 波打つ光沢のある大型葉、長さ1.5〜2m超 大型

種ごとの要求条件は一律ではない

「アンスリウムは高湿度を好む」とひとくくりにされがちだが、実際には種によって要求がかなり違う。この違いを知らずに「アンスリウム=湿度80%」と思い込むと、必要のない設備投資をしたり、逆に足りないまま枯らしたりする。

種 耐寒温度 生育適温 必要湿度 難易度
アンドレアナム系(花もの) 15℃以上 20〜28℃ 50〜70% ★☆☆
クラリネルビウム 12℃以上 18〜28℃ 50〜70% ★★☆
ベイチー 12℃以上 18〜30℃ 60〜80% ★★☆
クリスタリナム 15℃以上 20〜28℃ 70〜80% ★★☆
マグニフィカム 15℃以上 20〜28℃ 70%以上(理想75〜85%) ★★★
ワロクアーナム 15℃以上(推奨18℃) 18〜26℃ 80%以上 ★★★

葉ものに挑戦するなら、クラリネルビウムから始めるのが最も失敗が少ない。厚い革質の葉を持ち、一般的な室内湿度(50〜70%)で形を保てる唯一に近い葉もの種だからだ。ここで「新葉が出るリズム」と「葉先の枯れ込みが出る湿度の境目」を体感してから、クリスタリナム以上へ進むと設備の判断を誤らない。

シャディ
シャディ植物のお世話係TIP

湿度計は部屋の壁ではなく、株のすぐそばの高さに置いてね。床置きの大型株と棚の上では湿度が10%以上違うことがあるし、加湿器の位置によっても変わる。数字で把握できると、必要な設備が見えてくるよ。

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育て方の共通ポイント

光

明るい間接光が最適。直射日光は仏炎苞や葉の色褪せ、葉焼けの原因になる。花ものタイプは光量が少なすぎると花が咲かなくなるため、レースカーテン越しの光が当たる場所が望ましい。

温度

生育適温は20〜28℃。サトイモ科の中でも寒さに弱く、15℃を下回ると成長が停止し、10℃以下では葉が傷む。冬季の窓際は冷気に注意。

水やり

土の表面が乾いたらたっぷり与える。着生植物のため、常に湿った状態は根腐れを招く。冬季は乾燥気味に管理する。

湿度

高湿度(60〜80%)を好む。特に葉ものタイプは湿度不足で葉の縁が枯れ込みやすい。葉水を毎日行うか、加湿器を併用する。トレイに水を張った上に鉢を置く方法も有効。

土

着生植物のため、通気性と排水性が極めて重要。一般的な観葉植物用土よりも粗い配合が適する。

葉ものアンスリウム向けの基本配合

40%
30%
20%
10%
  • バークチップ(中粒)
  • 軽石・日向土(小粒)
  • 赤玉土(小粒)
  • くん炭またはゼオライト

一般的な観葉植物用土をそのまま使うと、粒が細かすぎて根のまわりの空気が足りなくなる。市販土を使う場合はバークチップか軽石を3〜4割足すのが前提と考えてよい。水苔単用での栽培も一般的だが、水苔は1〜2年で分解して保水に偏るため、定期的な交換が必要になる。

クロ
クロ土・植え替え担当POINT

着生植物の根は、土の中の「水」より「空気」を優先して探す性質があるよ。だから一般的な観葉植物より粗めの粒を選ぶのは、水はけだけでなく根に呼吸させるための工夫でもあるんだ。

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肥料

成長期に2週間に1回の液肥(規定量の半分程度)。または月1回の緩効性肥料。リン酸を含む肥料は花ものタイプの開花促進に効果がある。冬季は不要。

植え替え

1〜2年に1回、5〜6月が適期。着生根が鉢から大きくはみ出したら植え替えのサイン。鉢は浅めのものが向く。


よくあるトラブル

花が咲かない(花ものタイプ)

原因は複数あり、順番に切り分ける。上から確認するほうが早い。

確認順 条件 満たしていないときの症状 対処
1 光量 葉は出るが蕾が上がらない。葉色が濃い緑に寄る レースカーテン越しの窓際へ。これが最多の原因
2 株の成熟度 葉が5枚未満、葉のサイズが小さい 開花に至る大きさではない。1〜2年待つ
3 温度 冬だけ止まる 15℃以上を保つ。低温期は開花しない
4 施肥 葉ばかり茂って咲かない 窒素過多。リン酸比率の高い肥料へ切り替える
5 根詰まり 水の染み込みが遅い/鉢底から根 成長期に一回り大きい鉢へ

仏炎苞は1枚あたり数週間〜数ヶ月もつため、「常に咲いている」状態を期待するより、年に数回のサイクルで更新されるものと捉えると管理しやすい。緑色に退色した仏炎苞は株の養分を使い続けるため、根元から切除すると次の花が上がりやすくなる。

葉が黄色くなる

過湿による根腐れ、または直射日光による葉焼けが主な原因。冬季の低温障害でも黄変が起こる。

葉先・葉縁が茶色くなる

湿度不足が最も多い原因。特に葉ものタイプで顕著。エアコンの直風や、冬季の乾燥した室内で悪化する。葉水の頻度を上げ、加湿器を併用する。

仏炎苞が緑色になる

花ものタイプの仏炎苞が緑色に退色するのは、光量不足または老化の自然なプロセス。緑化した仏炎苞は茎の根元から切除し、新しい花の展開を促す。

根腐れ

通気性の低い土、過剰な水やり、底穴のない鉢が原因。茎の基部が黒く柔らかくなったら根腐れの可能性が高い。鉢から出して腐った根を除去し、通気性の高い用土(バーク主体)に植え替える。


花もの・葉ものタイプの選び方

アンスリウムを選ぶ際は、「花を楽しみたいか、葉を楽しみたいか」で方向性が変わる。

花ものタイプ(フラワーアンスリウム)

アンドレアナム系のハイブリッドが主体。管理のしやすさと開花の容易さが最大のメリット。仏炎苞の色を複数そろえてコレクションするスタイルも人気。比較的安価で手に入れやすい。

葉ものタイプ(ベルベットアンスリウム・コレクター品種)

クラリネルビウム、クリスタリナム、ワロクアーナムなどが代表。葉の質感・葉脈模様・サイズが観賞の主役で、希少品種はコレクター市場で高額になることも多い。花ものより栽培難易度がやや高く、高湿度の管理が欠かせない。

入門者には花ものタイプから始め、栽培に慣れてから葉ものタイプに挑戦するルートが失敗が少ない。

クロ
クロ土・植え替え担当TIP

花ものタイプで「開花のサイクル」を体で覚えておくと、後で葉ものタイプに挑戦したときも生育リズムのイメージがつかみやすいよ。花が咲かないタイプでも、成長の波は共通しているんだ。

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繁殖と増やし方

アンスリウムの繁殖は株分けが最も安定しており、一般家庭でも実施しやすい。

株分け

成熟した株が複数の茎を出した場合、植え替え時に丁寧に株分けする。根を傷めないよう丁寧にほぐし、切り口をシナモンや殺菌剤で処理してから植え付ける。5〜6月が適期。

茎挿し(挿し木)

気根が発達した茎を切り取り、バーク主体の培地に挿す。着生植物のため、通気性の高い培地が発根を促す。発根まで4〜6週間。

種まき

交配させた果実から種を取り出し、湿らせた培地に播く。発芽まで2〜4週間。実生からの栽培は時間がかかるが、新しい交配品種が生まれる楽しみがある。コレクター間での実生取引も盛んである。


まとめ

  • アンスリウム属はサトイモ科最大の属で、約1,000種以上が中南米に自生
  • 花ものタイプ(仏炎苞を観賞)と葉ものタイプ(葉を観賞)の2系統がある
  • 着生植物のため、通気性の高い粗めの用土が必須
  • 高湿度(60%以上)と明るい間接光が栽培の基本
  • 寒さに弱く、冬季は15℃以上を維持する
  • 花ものタイプは十分な光量を確保しないと開花しない

この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi

Masashi Matsubuchi / tokyoplants

tokyoplants オーナー

東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。

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