アンスリウム属とは|主な品種・育て方・特徴を解説
アンスリウム属とは
アンスリウム属(Anthurium)はサトイモ科に属する常緑多年草のグループで、約1,000種以上が記載されており、サトイモ科で最大の属である。中南米の熱帯雨林に自生し、着生または地生で生育する。光沢のある仏炎苞(ぶつえんほう)を持つ花ものタイプと、ビロード質の大きな葉を観賞する葉ものタイプに大別される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 科名 | サトイモ科(Araceae) |
| 属名 | アンスリウム属(Anthurium) |
| 種数 | 約1,000種以上 |
| 原産地 | 中南米の熱帯雨林(コロンビア、エクアドル周辺に多い) |
| 生育型 | 常緑多年草(着生または地生) |
| 耐寒温度 | 多くの種で15℃以上 |
属の特徴
仏炎苞と肉穂花序
アンスリウムの「花」として認識される色鮮やかな部分は、実際には仏炎苞(スパース)と呼ばれる変形した葉である。本当の花は中央の棒状の肉穂花序(スパディックス)に密集しており、非常に小さい。
仏炎苞の色は赤・ピンク・白・緑・紫など多様で、花ものタイプの観賞価値はこの仏炎苞に依存する。仏炎苞は数週間〜数ヶ月色を保つため、「花持ちの良い観葉植物」として人気がある。
着生の生態
多くの種が樹木の幹や岩に着生して生育する。根は空気中に露出し、水分と養分を効率的に吸収する。このため、根の通気性を確保する用土選びが栽培の鍵になる。
葉の多様性
花ものタイプは楕円形〜ハート型の光沢ある葉が一般的だが、葉ものタイプには掌状に深く裂ける葉、細長い剣状の葉、ビロード質で葉脈が銀白色に浮き出る葉など、多様な形態が存在する。
学名の由来と歴史
属名 Anthurium はギリシャ語の "anthos"(花)と "oura"(尾)を組み合わせた造語で、尾のように突き出た肉穂花序の形に由来する。1829年にオーストリアの植物学者Heinrich Wilhelm Schottが記載した。
切り花としての利用はハワイで商業化が進み、20世紀前半にハワイの花卉産業の主力品目となった。日本では鉢花として1980年代以降に広く普及し、近年は葉ものタイプのレア品種がコレクター市場で人気を集めている。
主な品種一覧
アンドレアナム系(A. andraeanum hybrids)
最も流通量が多い花ものタイプ。赤・ピンク・白・緑など仏炎苞の色が豊富で、ギフトや室内装飾に広く使われる。丈夫で開花しやすく、適切な管理で年間を通じて花を楽しめる。
クラリネルビウム(A. clarinervium)
葉ものタイプの代表格。ダークグリーンのハート型の葉に、銀白色の葉脈がくっきり浮き出る。ビロード質の質感も美しく、コレクター人気が非常に高い。高湿度を要求するため、テラリウムやクリアケース内での栽培も行われる。
クリスタリナム(A. crystallinum)
クラリネルビウムに似た銀白色の葉脈を持つが、葉がより大型で薄く、光沢がある。交雑しやすく、クラリネルビウムとの交配種も多く流通する。
ワロクアナム(A. warocqueanum)
「クイーン・アンスリウム」の異名を持つ。細長い剣状の葉は長さ1m以上になり、ダークグリーンにシルバーの葉脈が走る。栽培難易度は高く、高湿度と通気性の両立が必要。
フォルゲティー(A. forgetii)
丸みを帯びた盾状の葉にシルバーの模様が入る。葉の先端が尖らず丸い(頂裂なし)のが特徴。小型で扱いやすく、葉ものアンスリウムの入門種としても人気。
ベイチー(A. veitchii)
「キング・アンスリウム」と呼ばれる大型の葉もの種。波打つ葉の表面は独特の光沢があり、長さ1m近くになる。成長は遅いが、成熟した株の迫力は圧倒的。
育て方の共通ポイント
光
明るい間接光が最適。直射日光は仏炎苞や葉の色褪せ、葉焼けの原因になる。花ものタイプは光量が少なすぎると花が咲かなくなるため、レースカーテン越しの光が当たる場所が望ましい。
温度
生育適温は20〜28℃。サトイモ科の中でも寒さに弱く、15℃を下回ると成長が停止し、10℃以下では葉が傷む。冬季の窓際は冷気に注意。
水やり
土の表面が乾いたらたっぷり与える。着生植物のため、常に湿った状態は根腐れを招く。冬季は乾燥気味に管理する。
湿度
高湿度(60〜80%)を好む。特に葉ものタイプは湿度不足で葉の縁が枯れ込みやすい。葉水を毎日行うか、加湿器を併用する。トレイに水を張った上に鉢を置く方法も有効。
土
着生植物のため、通気性と排水性が極めて重要。一般的な観葉植物用土よりも粗い配合が適する。バークチップ、パーライト、ピートモスを主体にした軽い用土が望ましい。水苔での栽培も一般的。
肥料
成長期に2週間に1回の液肥(規定量の半分程度)。または月1回の緩効性肥料。リン酸を含む肥料は花ものタイプの開花促進に効果がある。冬季は不要。
植え替え
1〜2年に1回、5〜6月が適期。着生根が鉢から大きくはみ出したら植え替えのサイン。鉢は浅めのものが向く。
よくあるトラブル
花が咲かない(花ものタイプ)
光量不足が最も多い原因。明るい間接光を確保する。また、株が若い(小さい)場合は開花に至らないことがある。肥料のリン酸比率を上げることで改善する場合もある。
葉が黄色くなる
過湿による根腐れ、または直射日光による葉焼けが主な原因。冬季の低温障害でも黄変が起こる。
葉先・葉縁が茶色くなる
湿度不足が最も多い原因。特に葉ものタイプで顕著。エアコンの直風や、冬季の乾燥した室内で悪化する。葉水の頻度を上げ、加湿器を併用する。
仏炎苞が緑色になる
花ものタイプの仏炎苞が緑色に退色するのは、光量不足または老化の自然なプロセス。緑化した仏炎苞は茎の根元から切除し、新しい花の展開を促す。
根腐れ
通気性の低い土、過剰な水やり、底穴のない鉢が原因。茎の基部が黒く柔らかくなったら根腐れの可能性が高い。鉢から出して腐った根を除去し、通気性の高い用土(バーク主体)に植え替える。
まとめ
- アンスリウム属はサトイモ科最大の属で、約1,000種以上が中南米に自生
- 花ものタイプ(仏炎苞を観賞)と葉ものタイプ(葉を観賞)の2系統がある
- 着生植物のため、通気性の高い粗めの用土が必須
- 高湿度(60%以上)と明るい間接光が栽培の基本
- 寒さに弱く、冬季は15℃以上を維持する
- 花ものタイプは十分な光量を確保しないと開花しない
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