カラテア・マランタの葉が閉じる『就眠運動』のしくみ
Contentsこの記事の内容8項目
日中は水平に広がっていたカラテアやマランタの葉が、夜になると垂直に立ち上がる——初めてこの動きを目にすると、まるで植物が意思を持っているかのような驚きを覚えます。この現象は「就眠運動(ナイクティナスティ、nyctinasty)」と呼ばれる植物の生理現象です。この記事では、その仕組みを科学的な観点から解説します。
結論
- 就眠運動は、葉の付け根にある「葉枕(プルビナス、pulvinus)」という特殊な組織の中で、カリウムイオンの出入りに伴う細胞の膨張・収縮が起こることで発生する物理的な動きである。
- この動きは光そのものへの単純な反応ではなく、植物が体内に持つ約24時間周期の体内時計(概日リズム)によって制御されているため、暗い場所に置いても一定期間は昼夜のリズムに合わせて葉が動き続ける。
- カラテア属・マランタ属が属するクズウコン科(マランタ科)の植物は、この就眠運動が特に発達したグループとして知られ、動きの機敏さには種による差がある。
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葉枕(プルビナス)という「関節」
就眠運動を理解する鍵は、葉柄の付け根にある葉枕(プルビナス)という組織にある。葉枕は、通常の茎や葉柄とは異なり、特殊な運動細胞(モータ細胞)が集まった、いわば植物の「関節」のような構造だ。この組織があることで、葉全体を大きく動かさなくても、葉枕の部分だけを曲げ伸ばしすることで葉の角度を変えられる。
カリウムイオンの移動が動きを生む
葉枕の中では、向かい合う2つの側面(上側と下側、あるいは表側と裏側)で、細胞内外のカリウムイオン(K⁺)の濃度が周期的に変化する。
- 一方の側の細胞がカリウムイオンを積極的に取り込む
- 浸透圧の関係で水分もイオンを追いかけるように細胞内に流入し、その側の細胞が膨張する
- 反対側の細胞では逆にカリウムイオンと水分が排出され、細胞が収縮する
- 片側が膨張し、反対側が収縮することで、葉枕全体が曲がり、葉の角度が変化する
就眠運動は筋肉のような能動的な「動作」ではなく、細胞の水分量の変化という物理的な仕組みによって生じる現象だ。しかし、そのタイミングを制御しているのは、後述する植物の体内時計という、極めて精巧な生体システムである。
光への反応ではなく「体内時計」が主導する
就眠運動は「暗くなったから閉じる」という単純な光センサーの反応だと誤解されがちだが、実際にはより複雑だ。植物は約24時間周期のリズムを刻む概日リズム(サーカディアンリズム)という体内時計を持っており、就眠運動はこの体内時計によって主導的に制御されている。
このことは、植物を完全な暗闇や常に明るい環境に置く実験からも確認されている。外部の光の変化がなくなった後も、植物はしばらくの間、約24時間周期で葉を開閉させ続ける。つまり、光の点灯・消灯という「外部シグナル」だけでなく、植物自身の内部に組み込まれた「時計」が就眠運動のリズムを刻んでいるということになる。もちろん、実際の生育環境では日々の光の変化が体内時計を微調整(同調)する役割を果たしており、光と体内時計は互いに影響し合う関係にある。
なぜこの動きが必要なのか
就眠運動の生態学的な意義については、いくつかの説が提唱されている。
- 水分蒸散の抑制:夜間、葉を立てることで葉の表面積の露出を減らし、余分な水分の蒸散を抑える
- 光合成効率の維持:日中は葉を水平に広げて光を最大限受け取り、光合成に利用しないタイミング(夜間)では姿勢を変える
- 葉の保護:夜露や急激な温度変化から葉の表面を守る
いずれの説も単独で完全に証明されているわけではなく、複数の適応的な意義が組み合わさっていると考えるのが妥当とされる。
カラテアとマランタで動きの機敏さが違う理由
クズウコン科(マランタ科)に属する植物は、就眠運動が特に発達したグループとして知られる。中でもマランタ属は、葉を合掌するように立てる動きが機敏で分かりやすく、この特徴的な動きが「祈りの植物(プレイヤープラント)」という愛称の由来になっている。カラテア属にも同様の就眠運動が見られるが、種によって動きの速さ・可動域には差がある。マランタの詳しい育て方や、カラテアとの違いについてはマランタ(祈りの植物)の育て方|カラテアとの違いで解説している。
就眠運動が鈍い・止まっている場合に疑うべきこと
健康な株ほど就眠運動は機敏に反応する傾向があるとされ、動きが鈍い・止まっている場合は株の状態を見直すサインになりうる。
| 状態 | 考えられる要因 |
|---|---|
| 動きが極端に鈍い | 極端な低光量・低湿度環境、株の体力低下 |
| 昼間もずっと葉が閉じている | 強すぎる光、乾燥ストレス |
| 夜になっても葉が開いたまま | 根詰まり・根腐れなど根のトラブル、株の衰弱 |
いずれの場合も、就眠運動そのものを直接治療する方法があるわけではなく、光量・湿度・水やり・根の状態といった基本的な栽培環境を見直すことが対処の基本になる。カラテア属全般の育て方・トラブル対処はカラテア属とは|人気品種・育て方・葉が丸まる原因と対処法、代表品種の詳細はカラテア・オービフォリアの育て方図鑑、カラテア・メダリオンの育て方図鑑を参照してほしい。
まとめ
- 就眠運動は、葉枕(プルビナス)という組織内でのカリウムイオンの移動と、それに伴う細胞の膨張・収縮によって起こる物理的な現象
- この動きは単純な光への反応ではなく、植物が持つ約24時間周期の体内時計(概日リズム)によって主導的に制御されている
- 水分蒸散の抑制や光合成効率の維持など、複数の適応的な意義が組み合わさっていると考えられている
- マランタ属はカラテア属以上に動きが機敏で分かりやすく、「祈りの植物」の愛称の由来になっている
- 動きが鈍い・止まっている場合は、光量・湿度・根の状態など基本的な栽培環境を見直すサインと捉えるとよい
この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi / tokyoplants
tokyoplants オーナー
東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。
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