観葉植物の空気清浄効果は本当?NASA研究の中身と限界
Contentsこの記事の内容7項目
「サンスベリアは空気をきれいにする」「NASAが認めた空気清浄植物」——観葉植物を調べていると、こうした言葉を必ず目にします。根拠として挙げられるのは、1989年にNASAが発表した研究です。ただ、この研究が「何を、どんな条件で調べたのか」まで説明されることはあまりありません。
この記事では、NASA研究の中身と、その後の研究が指摘した限界を整理したうえで、「実際の部屋で観葉植物に空気清浄を期待できるのか」に正直に答えます。
結論(最初に答え)
一般的な住宅の部屋で、観葉植物による空気清浄効果を体感できるレベルで得ることは、現実的ではないとされています。
- NASAの研究(1989年)は密閉した小型のチャンバー内で、植物が特定の化学物質を減らすことを示したもので、換気のある実際の部屋を対象にした研究ではありません
- 2019年に過去の研究をまとめて分析した系統的レビューでは、部屋の換気による希釈の方が、植物による除去より桁違いに速いと結論づけられています
- 室内の空気を改善したいなら、換気と空気清浄機が現実的な手段です
- 観葉植物には、湿度や心理面など空気清浄とは別の価値があります。「空気をきれいにするから」ではなく、その価値のために置くのが、期待外れを防ぐ考え方です
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NASA研究(1989年 クリーンエア・スタディ)の中身
何を調べた研究なのか
1989年にNASAのウォルバートン博士らが発表した「A Study of Interior Landscape Plants for Indoor Air Pollution Abatement」(通称クリーンエア・スタディ)は、将来の宇宙ステーションのような閉鎖空間で、植物が空気中の有害物質を減らせるかを調べた研究です。
方法は、密閉したチャンバー(実験用の箱)に植物を入れ、ベンゼン・トリクロロエチレン・ホルムアルデヒドといった揮発性有機化合物(VOC)を注入して、24時間後に濃度がどれだけ下がったかを測定する、というものでした。結果として、植物の種類や物質によっては濃度が大きく低下したと報告されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表年 | 1989年 |
| 実施機関 | NASA(ステニス宇宙センター)と米国造園業者団体(ALCA)の共同 |
| 目的 | 閉鎖空間(宇宙ステーション等)での空気浄化の可能性を探る |
| 実験環境 | 密閉した小型チャンバー |
| 対象物質 | ベンゼン、トリクロロエチレン、ホルムアルデヒドなど |
| 測定 | 物質を注入してから24時間後の濃度変化 |
| 対象 | 一般的な観葉植物 十数種(後続の研究でさらに追加) |
この研究の限界
問題は、この結果が「一般家庭の部屋」にそのまま当てはまらないことです。
- 密閉空間と換気のある部屋は条件がまったく違う。 実際の部屋では、窓の開閉や換気設備、建物のすき間から常に空気が入れ替わっています。チャンバーにはこの「入れ替え」がありません
- 植物の密度が現実離れしている。 小さな箱に対して植物1鉢は、部屋の広さで考えると非常に高い密度です
- VOCの発生源は室内にあり続ける。 建材や家具から出続ける物質を、一度注入して終わりの実験では再現できません
この研究はあくまで閉鎖空間での可能性を探るものであり、「NASAが家庭での空気清浄効果を認めた」という理解は、研究の趣旨からずれています。

チャンバー実験で効いていたのは葉だけじゃなく、根の周りの土や微生物の働きも大きいと報告されている。だから「植物の種類」の差で語られがちなランキングも、実際は鉢全体の仕組みの話。種類選びで空気清浄効果を上げようとするのは、あまり意味がないよ。
2019年の系統的レビューが示したこと
2019年、米ドレクセル大学のカミングス(Cummings)とウェアリング(Waring)は、NASA研究を含む約30年分・十数件の研究を集めて再分析したレビュー論文を「Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiology」誌に発表しました。
この論文では、各研究の結果を「クリーンエア供給率(CADR)」という、空気清浄機の性能評価にも使われる共通の指標に換算して比較しています。その結論は次の通りです。
- チャンバー内で植物がVOCを減らす速度は、建物の一般的な換気による希釈速度より桁違いに遅い
- 一般的な建物の換気と同じ効果を植物で得るには、床面積1平方メートルあたり10〜1,000鉢の植物が必要になる計算
- したがって、通常の室内環境では、鉢植えの植物が空気質に与える影響は無視できる程度
床1平方メートルあたり最低でも10鉢というのは、6畳(約10平方メートル)の部屋なら100鉢以上、多い見積もりでは1万鉢という水準です。この数字を見れば、「部屋に数鉢置いて空気がきれいになる」という期待が現実的でないことがわかります。
| 比較項目 | 密閉チャンバー(NASA研究) | 実際の部屋(2019年レビューの分析) |
|---|---|---|
| 空気の入れ替え | なし | 換気・すき間風で常にある |
| 植物の密度 | 小さな箱に1鉢(非常に高密度) | 部屋に数鉢(非常に低密度) |
| VOCの供給 | 一度注入して終わり | 建材・家具から出続ける |
| 植物の寄与 | 濃度が大きく低下 | 換気に比べて無視できる程度 |
論文の原題は「Potted plants do not improve indoor air quality: a review and analysis of reported VOC removal efficiencies」で、タイトル自体が結論を端的に表しています。
NASA研究で取り上げられた植物
「空気清浄植物」として紹介される種類は、NASA研究とその後の関連研究で試験対象になった植物がもとになっています。ここでは「効果が高い」という順位づけではなく、研究で扱われた植物として紹介します。いずれも育てやすく、観葉植物として人気の高い種類です。
| 植物 | 研究での扱い | 観葉植物としての特徴 |
|---|---|---|
| サンスベリア | 1989年の研究で試験対象 | 乾燥に強く、水やりの頻度が少なくて済む。「サンスベリアの育て方」 |
| ポトス | 1989年の研究で試験対象 | 耐陰性があり、初心者向け。つるを伸ばして増やしやすい |
| スパティフィラム | 1989年の研究で試験対象 | 白い仏炎苞が特徴。室内でも花を楽しめる。「スパティフィラムの育て方」 |
| ドラセナ類 | 1989年の研究で複数種が試験対象 | 幹立ちして存在感がある。比較的丈夫 |
| アレカヤシ | 研究チームの後年の著書で紹介された種 | 葉数が多く、ヤシの中では室内向き |
| オリヅルラン | NASAの一連の研究で試験対象 | 子株が次々と出て増やしやすい |
| アイビー(ヘデラ) | 1989年の研究で試験対象 | つる性で吊り鉢向き。寒さにも比較的強い |
「サンスベリアは夜も酸素を出す」について
サンスベリアが特別視される理由の一つに「夜間に酸素を出す」という説明があります。これは、サンスベリアがCAM型光合成という仕組みを持ち、乾燥に適応するため夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込む性質から来ています。その際にごく微量の酸素も放出されますが、その量は部屋の換気量に比べれば無視できる程度です。同じCAM型の多肉植物にも共通する性質で、サンスベリアだけの特殊能力ではありません。寝室に置く価値は、酸素ではなく後述の心理面や管理のしやすさにあると考える方が適切です。

「空気清浄のために」と暗い部屋の隅に置かれた植物は、光が足りずに弱っていくことが多いんだ。空気清浄効果を目的に置き場所を決めるより、その植物が元気に育つ光のある場所を優先してあげてね。
それでも観葉植物を置く価値
空気清浄効果が期待できないとしても、観葉植物を置く意味がなくなるわけではありません。研究で示されている範囲で、別の価値を整理します。
心理面・生理面への影響
植物に触れる作業の後に交感神経の活動が下がり、主観的な快適感が高まったことを示す研究(千葉大学の研究グループ、2015年)や、窓から自然が見える病室の患者の入院日数が短かったという古典的な研究(Ulrich, 1984)など、植物や自然物が心身に与える影響を扱った研究は複数あります。詳しくは「観葉植物のリラックス効果は本当?科学的根拠を検証」で、研究の内容と限界をまとめています。
作業効率や睡眠への影響については「観葉植物は睡眠・生産性に効果がある?研究を検証」で整理しています。こちらも「劇的な効果」ではなく「限定的だが確認されている範囲」を扱った記事です。
湿度への影響
植物は葉から水分を蒸散するため、周囲の湿度をわずかに上げます。ただし、加湿器の代わりになるほどの量ではなく、部屋全体の湿度を動かすには至りません。冬の乾燥対策としては、加湿器や葉水と組み合わせるのが現実的です。
世話をする習慣そのもの
水やりや観察のために植物に目を向ける時間が、生活のリズムを作る側面もあります。前述の千葉大学の研究が示したのは「眺める」より「関わる」ことの効果であり、日々の世話が心理面の価値につながると考えられています。

植物を置く理由が「空気」から「気持ち」に変わると、置き場所も変わってくるよ。目に入る場所、朝に様子を見られる場所に置くと、世話の習慣が続きやすい。水やりの記録をアプリでつけると、その習慣がさらに定着しやすくなるよ。
空気をきれいにしたいなら何をすべきか
空気質の改善が目的なら、植物ではなく次の手段が有効です。
| 手段 | 効果の対象 | ポイント |
|---|---|---|
| 換気 | VOC、二酸化炭素、におい全般 | 最も効果が大きく、費用もかからない。1日数回、対角の窓を開けると効率がよい |
| 空気清浄機 | 粉じん、花粉、ハウスダスト(機種によりVOCも) | 部屋の広さに合った適用床面積の機種を選ぶ |
| 発生源の対策 | ホルムアルデヒド等 | 低VOCの建材・家具を選ぶ、新しい家具はしばらく換気を強めるなど |
観葉植物は、これらの手段の代わりにはなりません。ただ、換気で空気を整えた部屋に植物があること自体は、上で挙げた心理面の価値として意味があります。
まとめ
- NASAの1989年研究は密閉チャンバー内の実験で、換気のある実際の部屋を対象にしたものではない
- 2019年の系統的レビューは、一般的な部屋で有意な効果を得るには非現実的な密度の植物が必要と結論づけている
- 空気清浄が目的なら換気と空気清浄機が現実的
- 観葉植物には心理面・生活習慣・わずかな湿度など、空気清浄とは別の価値がある
- 「空気をきれいにする植物」ではなく「一緒に暮らしたい植物」として選ぶ方が、期待外れにならない
この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi / tokyoplants
tokyoplants オーナー
東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。
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