シュロチク・カンノンチク図鑑|違いと管理
シュロチクとカンノンチクは、江戸時代から日本で育てられてきたヤシ科カンノンチク属(Rhapis)の2種です。どちらも「竹」と付きますがタケ類ではなく、細い茎が株立ちするヤシの仲間です。この2種は流通の現場でもしばしば取り違えられ、学名が入れ替わって紹介されていることが珍しくありません。しかし見分け方そのものは単純で、葉を1枚見れば判断できます。この記事では、2種の対応関係を一次情報で確認したうえで、見分け方、耐陰性・耐寒性の実態、そして株分けまでを整理します。
- シュロチク
- Rhapis humilis Blume(葉が細く枚数が多い)
- カンノンチク
- Rhapis excelsa (Thunb.) A.Henry(葉が幅広く枚数が少ない)
- 科
- ヤシ科(Arecaceae)カンノンチク属
- 耐寒温度
- 0〜3℃が目安。観葉植物では最上位クラス
- 耐陰性
- 非常に高い。北向きの室内でも維持できる
- 苦手
- 夏の直射日光と、根詰まりからの水切れ
結論(要点3つで先に答える)
- シュロチク=Rhapis humilis、カンノンチク=Rhapis excelsa。 これが正しい対応です(GBIF Backbone Taxonomy でいずれも受容名として登録されています)。取り違えが多い組み合わせなので、購入時はラベルの学名ではなく葉の形で判断するのが確実です。
- 見分けるポイントは「1枚の葉が何枚に裂けているか」。 細い裂片が10枚以上並ぶのがシュロチク、幅広い裂片が4〜8枚程度なのがカンノンチクです。
- どちらも耐陰性・耐寒性が観葉植物のトップクラス。 0〜3℃を目安とし、関東以南では屋外越冬の例もあります。弱点は暗さや寒さではなく、夏の直射日光と根詰まりです。
基本情報
| 項目 | シュロチク | カンノンチク |
|---|---|---|
| 学名 | Rhapis humilis Blume | Rhapis excelsa (Thunb.) A.Henry |
| 漢字表記 | 棕櫚竹 | 観音竹 |
| 科・属 | ヤシ科(Arecaceae)カンノンチク属 | 同左 |
| 英名 | Slender Lady Palm | Lady Palm / Broadleaf Lady Palm |
| 原産地 | 中国南部〜南西部 | 中国南部・ベトナム・タイ |
| 草姿 | 細い葉が密に付き、全体に軽やか。やや大型になる | 葉が幅広く、こんもりと締まった印象 |
| 生育適温 | 18〜28℃ | 18〜28℃ |
| 耐寒温度 | 0〜3℃を目安(2種のうちではやや強いとされる) | 0〜3℃を目安 |
| 耐陰性 | 非常に高い | 非常に高い |
| 毒性 | — | ASPCAは Lady Palm(Rhapis flabelliformis=R. excelsa のシノニム)を犬・猫に非毒性と分類 |
2種の違い——葉を1枚見れば分かる
シュロチク(Rhapis humilis)
- 裂片: 細長い裂片が10枚以上(文献により7〜20枚)
- 裂片の先: やや尖る
- 葉全体: 半円形の扇状に深く裂ける
- 印象: 繊細で軽やか。和室・料亭で見る「あの姿」
- 草丈: 大きくなると3m近くに達することも
- 由来: 葉がシュロに似て、茎が竹のようなことから
カンノンチク(Rhapis excelsa)
- 裂片: 幅広い裂片が4〜8枚程度(文献により2〜13枚)
- 裂片の先: ギザギザ(鋸歯状)
- 葉全体: 手を広げたような掌状
- 印象: どっしり、こんもり。小型の銘品も多い
- 草丈: おおむね2m前後まで
- 由来: 沖縄・首里観音堂の周辺に生えていたという説が知られる
裂片の枚数は文献によって幅がありますが、「細い葉が多数」がシュロチク、「幅広い葉が少数」がカンノンチクという関係は共通しています。実物を並べると印象がまったく違うため、一度見比べれば迷わなくなります。
売り場で使える見分け方3ポイント
①裂片の幅を見る
1枚の葉を指でつまんでみる。指1本ほどの細さならシュロチク、指2〜3本分の幅があればカンノンチク。最も確実で、迷ったらこれだけでよい。
②先端の形を見る
裂片の先がすっと尖っていればシュロチク、ギザギザに切れ込んでいればカンノンチク。斑入り品種でも変わらない形質。
③全体のシルエット
縦に伸びて風になびく軽さがあればシュロチク。低く広がってこんもりまとまっていればカンノンチク。離れて見るときの判断材料になる。

ラベルの学名は信用しすぎないほうがいい。この2種は流通の段階で入れ替わっていることが実際にある。葉を1枚つまんで、細いか幅広いか——それが一番速くて確実な判定だ。
特徴——なぜ日本の住宅に合うのか
林床育ちの耐陰性
カンノンチク属は、中国南部からインドシナにかけての常緑樹林の林床に自生します。頭上の樹冠に光を遮られた環境で育つため、弱い光でも光合成が成立する構造を持っています。これが観葉植物としての圧倒的な耐陰性の正体で、北向きの部屋や廊下といった、多くの観葉植物が徒長する場所でも姿を保てます。
一方で、この性質の裏返しとして夏の直射日光には弱いという弱点があります。屋外に出す場合は必ず半日陰を選んでください。真夏の西日が数時間当たるだけで、葉が白く抜けたように褪色します。
地下茎で株立ちになる
1本の茎が太く育つのではなく、地下茎(根茎)から次々に新しい茎(ラメット)を立ち上げて群生します。鉢の中では地下茎が横へ広がるため、根が鉢の内壁に沿ってぎっしり回りやすいのが特徴です。これが後述の「根詰まり」が最大のトラブルになる理由でもあります。
茎の表面は褐色の繊維状の葉鞘に覆われており、これがタケの稈のように見えることから「竹」の名が付きました。

耐陰性が高いというのは「暗くても枯れない」という意味で、「暗いほうがいい」ではないよ。レースカーテン越しの明るさがあれば新しい葉がしっかり展開する。北の部屋に置いているなら、年に数回、明るい場所で数週間休ませてあげるといい。
雌雄異株
カンノンチク属は雌雄異株です。特にシュロチクは、栽培されている株のほとんどが雄株のクローンとされ、家庭で種子が採れることはまずありません。増やす手段は事実上、株分け一択です。
名前の由来・来歴
属名 Rhapis はギリシャ語の「針」に由来するとされ、細く裂けた葉を指しています。カンノンチクの種小名 excelsa は「高い」、シュロチクの humilis は「低い」を意味しますが、実際の草丈はシュロチクのほうが大きくなることが多く、名前と実態が逆転している点は園芸家の間でよく話題になります。
日本には江戸時代初期には渡来しており、2種をまとめて「観棕竹(かんそうちく)」と呼ぶ習慣がありました。とくにカンノンチクは斑入りや矮性の変異を集めた古典園芸植物として発展し、多数の銘品が名前付きで受け継がれています。沖縄では不老長寿の縁起物として扱われた歴史もあり、和室に置く植物の定番として今日まで残りました。
育て方
置き場所と光
明るい日陰〜レースカーテン越しの光が最適です。耐陰性が高いため北向きの部屋でも維持できますが、新芽の展開は明らかに遅くなります。夏の直射日光は厳禁で、屋外に出すなら半日陰に限ります。
エアコンの風が直接当たる場所は、葉先の枯れ込みとハダニの温床になるため避けてください。
水やり
春〜秋は土の表面が乾いたらたっぷり、冬は乾いてから数日待ちます。ヤシ科としては乾燥に強い部類ですが、根詰まりした株は水が土に浸透せず、鉢の縁から流れ落ちるだけになります。「水をやっているのに葉先が枯れる」という相談の多くはこれです。
用土
排水性と保水性を両立した土を使います。tokyoplantsの『 I'm original SOIL(tokyoplantsプレミアム培養土) 』は、ココチップ・日向石・蘭の発酵樹皮を中心とした配合で、地下茎が動きやすい通気性があります。大株で鉢が深い場合は軽石を1〜2割足すとさらに安定します。配合の考え方や市販品の比較はシュロチクの土おすすめと配合レシピで詳しく解説しています。
Pick Up — この記事で使う用土
肥料
5〜9月に緩効性肥料を2か月に1回、または液体肥料を月1〜2回。成長が緩やかな植物なので、多肥にしても早く育つわけではありません。むしろ根を傷めるため控えめが安全です。冬は不要です。
温度と冬越し
生育適温は18〜28℃。耐寒温度は0〜3℃が目安で、観葉植物としては最上位クラスの強さです。関東以南では屋外で越冬している例もありますが、鉢植えで土が湿ったまま凍ると根が傷むため、屋外に置く場合は軒下など雨の当たらない場所を選んでください。
室内であれば無加温の部屋でも問題なく冬を越します。他の観葉植物との序列は観葉植物の耐寒性ランキングを参照してください。
仕立て
古い茎は数年で葉数が減り、株元が見苦しくなります。枯れ込んだ茎は地際から間引くと、新しい茎に光と養分が回り、全体が若返ります。一度に切るのは全体の1/3までにとどめてください。
年間管理
よくあるトラブル
| 症状 | 原因候補 | 切り分け | 対処 |
|---|---|---|---|
| 葉先だけが茶色く枯れる | 根詰まり/乾燥/エアコンの風 | 水やり時に土へ染み込むかを確認 | 染み込まなければ植え替え。風が当たるなら移動。枯れた部分は葉の形に沿って切る |
| 下葉から順に黄変する | 根詰まり/古い茎の寿命 | 新芽が動いているかを確認 | 新芽が出ていれば古い茎の代謝。出ていなければ植え替え |
| 葉が白くかすれる・葉裏に細かい網 | ハダニ | 葉裏をルーペで見る | 葉水とシャワーで洗い流す。乾燥する冬季ほど発生しやすい |
| 葉の付け根に白い綿・茶色い殻 | カイガラムシ | 茎と葉鞘の隙間を確認 | 歯ブラシや綿棒で物理的に除去。繁茂した株は古茎を間引いて風通しを確保 |
| 葉全体が白っぽく褪色する | 強光による葉焼け | 直射が当たる時間帯があったか | 半日陰へ移動。褪色した葉は戻らない |
| 新芽が出ない・成長が止まった | 光量不足/根詰まり/低温 | 置き場所・鉢の状態・室温を順に確認 | 明るい場所へ。5〜6月に植え替え |
| 株元がぐらつく | 地下茎の伸びすぎ/鉢が小さい | 鉢を持ち上げて根の状態を見る | 一回り大きい鉢へ植え替え、または株分け |

ハダニは「暖房で乾いた冬の室内」でいちばん増えるよ。葉が多くて内側が見えにくい植物だから、月に一度は葉裏を確認して、ついでに霧吹きで洗い流しておくと安心。水やりや葉水の記録をアプリに残しておくと、間隔が空いた時期に気づきやすいんだ。
増やし方——株分け
地下茎で群生するため、株分けが最も確実です。適期は5〜6月。植え替えと同時に行います。
- 1前日に水をやる土が完全に乾いた状態だと根が切れやすい。前日に軽く湿らせておく
- 2鉢から抜く鉢の側面を叩いて緩め、株元を持って引き抜く。根が回っていれば鉢を切るほうが安全
- 3地下茎のつながりを探す外側から土を落とし、茎と茎をつなぐ地下茎を目で確認する。むやみにほぐさない
- 4切り分ける清潔でよく切れる刃物で地下茎を切る。1株あたり茎を3本以上つけるのが失敗しないコツ。2本以下だと回復に時間がかかる
- 5傷んだ根を整理する黒く柔らかい根だけを取り除く。白い根は残す
- 6植え付ける水はけのよい土で、元の深さと同じ高さに植える。深植えは茎の腐りの原因
- 7明るい日陰で養生2〜3週間は直射を避け、土が乾きすぎないよう管理。この間の肥料は不要

株分けで小さく分けすぎるのが、いちばんよくある失敗だ。茎を3本以上残せば、そのうち1本が傷んでも株全体は動く。「たくさん増やす」より「確実に活着させる」を優先したほうが、結果的に早く大株になる。
まとめ(要点3つに戻す)
- シュロチク=Rhapis humilis、カンノンチク=Rhapis excelsa。 取り違えが多いので、ラベルではなく葉で判断する。
- 見分けは裂片の幅と枚数。 細い裂片が10枚以上ならシュロチク、幅広い裂片が4〜8枚でギザギザならカンノンチク。
- 弱点は暗さでも寒さでもなく、夏の直射日光と根詰まり。 0〜3℃まで耐え、北向きでも維持できる一方、地下茎で鉢がすぐ根でいっぱいになる。数年に一度の植え替えが最大のメンテナンス。
同じヤシ科で室内向きの定番としてはテーブルヤシ(Chamaedorea elegans)があり、こちらは耐寒温度10℃以上とカンノンチク属より寒さに弱い点が異なります。和の雰囲気と高い耐陰性という点ではアスピディストラ(ハラン)も近い立ち位置です。用土の詳細はシュロチクの土おすすめと配合レシピへ。tokyoplantsの観葉植物の商品一覧もあわせてご覧ください。
参考にした情報源
- GBIF Backbone Taxonomy(Rhapis humilis / Rhapis excelsa の受容名確認): https://www.gbif.org/
- 『カンノンチク属』Wikipedia(和名と学名の対応): https://ja.wikipedia.org/wiki/カンノンチク属
この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi / tokyoplants
tokyoplants オーナー
東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。
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