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タマサキツヅラフジ|育て方と見分け方
植物図鑑

タマサキツヅラフジ|育て方と見分け方

by Masashi Matsubuchi
Contentsこの記事の内容8項目
  1. 1結論
  2. 2基本情報
  3. 3エレクタとの違い——どこで見分けるか
  4. 4医薬品セファランチンの原料植物という顔
  5. 5育て方
  6. 6よくあるトラブル
  7. 7よくある質問
  8. 8まとめ

「山乌龟(シャンウーグイ)」という中国名で売られていた塊根が、調べてみたらタマサキツヅラフジだった——ステファニアを集めはじめると、こういう出会い方をすることがあります。Stephania cephalantha Hayata は、丸い塊根から蔓を伸ばす姿こそエレクタに似ていますが、自生域も、日本との関わり方も、まったく違う種です。この記事では、エレクタとの見分け方と、実際の育て方を整理します。

At a glance30秒でわかるタマサキツヅラフジ
学名
Stephania cephalantha Hayata(受理名)
自生域
中国中南部〜東南部・台湾・ベトナム
別名
山乌龟/金线吊乌龟/白药子(中国名)
生育型
夏型の塊根性つる植物。冬に落葉して休眠
冬の最低温度
栽培上は10℃以上を目安にする
特記
医薬品セファランチンの原料植物

結論

  1. タマサキツヅラフジは「エレクタの仲間」ではあるが、自生域が中国〜台湾の温帯〜亜熱帯域に広がる別種。熱帯のタイ・カンボジア原産であるエレクタとは、もともと経験してきた冬の寒さが違います。
  2. 栽培の基本はエレクタと同じ「成長期にしっかり光と水、冬は断水して休眠させる」の2モード。属に共通するリズムなので、エレクタやカウィーサキを育てた経験はそのまま応用できます。
  3. 日本では医薬品セファランチンの原料植物として知られている。ただし園芸株を薬用に使うことは絶対に避けてください。

基本情報

項目 内容
学名 Stephania cephalantha Hayata
科 / 属 ツヅラフジ科(Menispermaceae) / ハスノハカズラ属(Stephania)
和名 タマサキツヅラフジ(タマザキツヅラフジとも)
中国名 金线吊乌龟、山乌龟、白药子 など
自生域 中国中南部・東南部、台湾、ベトナム
生育型 塊根性つる植物(夏型コーデックス)
落葉性 あり(低温期に地上部を落とす)
難易度 ★★★☆☆(中級)

自生域は世界の維管束植物チェックリスト(WCVP)で「China South-Central/China Southeast/Taiwan/Vietnam」と整理されています。Catalogue of Life では琉球列島に導入(introduced)として記録がありますが、日本列島の在来種ではありません。

クロ
クロ土・植え替え担当POINT

自生域を見ると、その株が「どんな冬を経験してきた系統なのか」が見えてくる。中国中部まで分布が届く種と、熱帯しか知らない種とでは、同じ属でも冬の余裕がちがうんだ。

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エレクタとの違い——どこで見分けるか

店頭でもネットでも、ステファニアは「山乌龟」「ステファニア sp.」といった曖昧な名前で流通することがあります。タマサキツヅラフジとエレクタを区別したいときは、次の点を見ます。

比較項目 タマサキツヅラフジ(S. cephalantha) エレクタ(S. erecta)
自生域 中国中南部・東南部、台湾、ベトナム タイ・カンボジア
気候帯 温帯〜亜熱帯 熱帯(明瞭な乾季と雨季)
流通名 山乌龟、白药子、タマサキツヅラフジ エレクタ、ステファニア・エレクタ
葉 盾状葉。株により葉がやや薄い 盾状葉。丸いハート形
国内での位置づけ 医薬品原料として古くから知られる 2010年代後半の塊根ブームの代表種
流通量 少ない(不定期) 多い

属全体の顔ぶれとそれぞれの見分け方はステファニア属とはに、エレクタ側の詳細はステファニア・エレクタの図鑑にまとめています。


医薬品セファランチンの原料植物という顔

タマサキツヅラフジは、観葉植物としてよりも先に、医薬品の原料植物として日本で知られてきた植物です。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している医療用医薬品の添付文書では、医薬品「セファランチン」の一般名が「セファランチン(タマサキツヅラフジ抽出アルカロイド)」と記載されています。有効成分はタマサキツヅラフジから抽出されたアルカロイドで、セファランチン・イソテトランドリン・シクレアニン・ベルバミンの4成分を主とする淡黄色の粉末であると添付文書に示されています。

観葉植物として塊根を眺めているあの植物が、国内の医療現場で処方される薬の由来でもある——というのは、ステファニアを集めるうえで知っておくと面白い背景です。


育て方

年間の管理サイクル

Calendar年間管理カレンダー
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
水やり
肥料
植え替え
芽出し管理
◎ 最適・多め○ 通常△ 控えめ× 不要・避ける関東の室内で管理した場合の目安。芽出し・落葉の時期は株と環境で前後する

置き場所と光

明るい間接光が基本です。レースカーテン越しの南〜東向きの窓辺が扱いやすく、屋外に出す場合は明るい半日陰にします。

光が足りないと蔓の節間が伸びて葉が小さくなり、薄い葉が垂れ下がったような姿になります。一方で真夏の直射日光、とくに西日が長時間当たる場所では葉が焼けます。春に室内から屋外へ移すときは、いきなり日なたに出さず1〜2週間かけて慣らしてください。

シャディ
シャディ植物のお世話係TIP

葉が「全部同じ方向を向いてきた」と感じたら、光が片側からしか来ていないサイン。週に1回くらい鉢を90度ずつ回してあげると、蔓の伸び方が偏りにくくなるよ。

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水やり

成長期(蔓と葉が展開している時期)と休眠期(落葉後)で、水やりをはっきり切り替えます。

時期 株の状態 水やり
春(芽出し期) 新芽が動きはじめる 土の表面が湿る程度を少量から。芽が5〜10cm伸びるまで控えめに
初夏〜初秋(成長期) 蔓と葉が旺盛に伸びる 土が完全に乾いてから2〜3日後に、鉢底から流れるまで
秋(移行期) 葉の色が抜け落ちはじめる 回数と量を徐々に減らし、断水へ着地させる
冬(休眠期) 落葉して塊根だけ 断水〜月1回ごく少量

塊根植物のトラブルは、ほぼすべてが「水をやりすぎた」側で起こります。迷ったときは1回見送るほうが安全です。

温度

生育適温は20〜30℃です。15℃を下回ると成長が鈍り、10℃前後で落葉して休眠に入ります。

Numbers押さえる温度
20〜30℃
生育適温
この範囲なら通常の成長期管理でよい
15℃
成長が鈍りはじめる
秋はここから水やりを減らしていく
10℃
冬に確保したい最低温度
室内の窓際から離した場所で越冬させる

自生域が中国中部の温帯域まで届くことから、熱帯原産のエレクタよりは低温に対して余裕があると考えられます。ただし日本の屋外での越冬を裏づけるデータは確認できていません。栽培上は他のステファニアと同じく、冬も最低10℃以上を確保する前提で管理してください。

用土と鉢

排水性を最優先にした粗い配合を使います。一般的な観葉植物用培養土は保水力が高すぎるため、そのままでは向きません。

配合の目安

40%
40%
20%
  • 赤玉土(小粒)
  • 軽石・日向土(小粒)
  • 腐葉土またはくん炭

市販の多肉植物・サボテン用土をそのまま使うか、軽石を2〜3割足して排水性をさらに上げる方法でも構いません。配合の考え方と各素材の役割は塊根植物に合う土の配合で詳しく解説しています。

鉢は通気性の高い素焼き鉢(テラコッタ)が扱いやすく、塊根のサイズより一回り大きい程度で十分です。大きすぎる鉢は土が乾くのに時間がかかり、過湿の原因になります。

Amazon配合済みで使える塊根・多肉向け用土

Amazonアソシエイトリンクを含みます。価格・在庫は変動します。

塊根の植え付け

塊根は半分以上を土の上に露出させて植えます。これは観賞上の理由だけでなく、塊根の表面が常に湿った土に触れている状態を避けるためでもあります。根は塊根の下部から出るので、下半分が土に入っていれば十分に機能します。

クロ
クロ土・植え替え担当WARNING

「安定しないから」と塊根を深く埋めてしまうのがいちばんよくある失敗。グラつくなら軽石や化粧石で周囲を押さえて固定して、塊根そのものは土から出したままにしておこう。

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肥料

成長期(5〜9月)に月1回、規定倍率よりさらに薄めた液肥を与える程度で十分です。塊根植物は肥料要求量が低く、与えすぎると蔓だけが伸びて間延びします。休眠期は施肥しません。


よくあるトラブル

症状 考えられる原因 対処
塊根が柔らかい・凹む 過湿による腐敗、または極度の乾燥 腐敗なら傷んだ部分を除去して乾かす。乾燥なら少量給水
冬に葉が全部落ちた 正常な休眠 断水して10℃以上の場所で春を待つ
春になっても芽が出ない 温度不足が最多 20℃以上の場所へ移し、ごく少量の水やりから再開
蔓が細く間延びする 光量不足 より明るい場所へ。育成ライトも有効
葉裏に白い点・クモの巣状の糸 ハダニ 葉裏を水で洗い流し、成長期は葉水で予防

休眠と芽出しのつまずきを原因別に切り分ける手順は、ステファニアの休眠と芽出しガイドにまとめました。


よくある質問

タマサキツヅラフジとステファニア・エレクタは同じものですか?

別の種です。どちらもツヅラフジ科ハスノハカズラ属(ステファニア属)の塊根植物ですが、タマサキツヅラフジは Stephania cephalantha Hayata、エレクタは Stephania erecta Craib(分類上は Stephania pierrei Diels のシノニム)で、自生域も中国〜台湾とタイ・カンボジアで異なります。

「山乌龟」という名前で売られていますが、どの種ですか?

名前だけでは断定できません。「山乌龟」は亀の甲羅状の塊根をつけるステファニア属の植物に広く使われる中国名で、タマサキツヅラフジに対して使われることが多いものの、他種に使われる場合もあります。学名の表記を確認してください。

日本に自生していますか?

在来種ではありません。自生域は中国中南部・東南部、台湾、ベトナムです。Catalogue of Life には琉球列島での導入(introduced)の記録がありますが、これは人為的に持ち込まれたものを指します。なお、日本に自生するステファニア属は Stephania japonica(ハスノハカズラ)で、こちらは関東地方以西に分布するつる植物であり、観賞用の球形塊根は作りません。

冬は何℃まで耐えますか?

正確な耐寒限界のデータは確認できていません。自生域から推測すればエレクタより低温に強いと考えられますが、栽培の安全域としては他のステファニアと同じく最低10℃以上を目安にしてください。5℃を下回る環境は避けます。


まとめ

  • タマサキツヅラフジ(Stephania cephalantha Hayata)は、中国中南部〜台湾・ベトナムを自生域とするステファニア属の塊根植物
  • エレクタとは別種で、温帯域まで分布が届くぶん冬の寒さに対して余裕があると考えられるが、栽培上は10℃以上を確保する
  • 育て方は属に共通で、「成長期はしっかり乾かしてから水やり、冬は断水して休眠」の2モード
  • 医薬品セファランチンの原料植物として知られるが、園芸株を薬用に使うことは絶対に避ける
  • 塊根は半分以上を土から出して植え、排水性を最優先した粗い用土を使う

ステファニア属のラインナップは tokyoplants のステファニア商品一覧でも確認できます。

この記事を書いた人

Masashi Matsubuchi

Masashi Matsubuchi / tokyoplants

tokyoplants オーナー

東京・世田谷を拠点とする希少観葉植物専門店「tokyoplants」オーナー。自ら海外へ足を運んで一点ずつ厳選した株を買い付け、年間800株以上を自身の手で育てて販売しています。

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